世界を変える起業哲学 「ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか」

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PayPalの創業者の一人であり、Facebookなどへの投資を手がけているエンジェル投資家であるピーター・ティールのゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるかを読みました。

ピーター・ティールの起業に対する考え方・哲学を中心とした内容で、一部凄すぎてついていけない部分もあったのですが、非常に面白い内容でした。

 

僕たちは未来を創ることができるのか

ゼロから1へ:進捗の未来

・未来を考える時、僕らは未来が今より進歩していることを願う。その進歩は次の二つの形のどちらかになる。ひとつは水平的進歩、または拡張的進歩と言ってもいい。それは、成功例をコピーすること、つまり1からnへと向かうことだ。水平的進歩は想像しやすい。すでに前例を見ているからだ。もうひとつの垂直的進歩、または集中的進歩とは、新しい何かを行なうこと、つまりゼロから1を生み出すことだ。それまで誰もやったことのない何かが求められる垂直的進歩は、想像するのが難しい。一台のタイプライターから同じものを一〇〇台作るのが水平的進歩だ。タイプライターからワープロを創れば、それは垂直的進歩になる。

スタートアップ思考

・スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ。新しい会社のいちばんの強みは新しい考え方で、少人数なら敏捷に動けることはもちろん、考えるスペースが与えられることが大きな利点になる。

 

一九九九年のお祭り騒ぎ

バブルの苦い薬

・シリコンバレーに居残った起業家は、ドットコム・バブルの崩壊から四つの大きな教訓を学んだ。それがいまだにビジネスを考える時の大前提となっている。
1 少しずつ段階的に前進すること 壮大なビジョンがバブルを膨張させた。だから、自分に酔ってはいけない。大口を叩く人間は怪しいし、世界を変えたいなら謙虚でなければならない。小さく段階的な歩みだけが、安全な道だ。
2 無駄なく柔軟であること すべての企業は「リーン」でなければならず、それはすなわち「計画しない」ことである。ビジネスの先行きは誰にもわからない。計画を立てるのは傲慢であり、柔軟性に欠ける。むしろ、試行錯誤を繰り返し、先の見えない実験として起業を扱うべきだ。
3 ライバルのものを改良すること 機が熟さないうちに新しい市場を創ろうとしてはならない。本当に商売になるかどうかを知るには、既存顧客のいる市場から始めるしかない。つまり成功しているライバルの人気商品を改良することから始めるべきだ。
4 販売ではなくプロダクトに集中すること 販売のために広告や営業が必要だとしたら、プロダクトに問題がある。テクノロジーは製品開発にこそ活かされるべきで、販売は二の次でいい。バブル時代の広告は明らかな浪費だった。バイラルな成長だけが持続可能なのだ。

・でも、むしろ正しいのは、それとは逆の原則だ。
1 小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
2 出来の悪い計画でも、ないよりはいい
3 競争の激しい市場では収益が消失する
4 販売はプロダクトと同じくらい大切だ

・イデオロギーを否定したところで、群衆の狂気から逃れられるとは限らない。むしろ、こう自問するべきだ。ビジネスについて、過去の失敗への間違った反省から生まれた認識はどれか。何よりの逆張りは、大勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えることだ。

 

幸福な企業はみなそれぞれ違う

・例の逆説的な質問をビジネスに当てはめるとこうなる。「誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?」この質問もまた見かけより難しい。というのも、大きな価値を生み出すだけなら、企業自体が価値ある存在でなくても可能だからだ。企業は価値を創造するだけでなく、創造した価値の一部を社内にとどめなければならない。

・永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスを行なってはならない。

追いつめられた人たち

・競争的なビジネスには、利益が出ないことよりも大きな問題がある。

独占的資本主義

・クリエイティブな独占企業は、まったく新しい潤沢な領域を生み出すことで、消費者により多くの選択肢を与えている。クリエイティブな独占は社会に役立つだけじゃない。それはより良い社会を作る強力な原動力になっている。

・もし独占企業に進歩を妨げる傾向があるなら、独占は危険だし、それに反対するのはもっともだ。でも、進歩の歴史とは、より良い独占企業が既存企業に取って代わってきた歴史なのだ。

 

イデオロギーとしての競争

・競争とはイデオロギーなのだ。社会に浸透し、僕たちの思考を歪めているのが、まさにこのイデオロギーだ。僕たちは競争を説き、その必要性を正当化し、その教義を実践する。その結果、自分自身が競争の中に捕らわれてしまう──競争すればするほど得られるものは減っていくのに。

戦争と平和

・競争は必要だと言われ、勇敢なことだとされるけれど、結局は破壊を招く。

・社員は出世のためにライバルとの競争に執着するようになる。企業もまた、市場の競合他社に執着する。そんな人間ドラマの常として、人は本質を見失い、ライバルばかりを気にするようになる。

 

終盤を制する

・競争を避けることで独占企業になれたとしても、将来にわたって存続できなければ、偉大な企業とは言えない。

・偉大な企業かどうかは、将来のキャッシュフローを創出する能力で決まる。投資家はツイッターがこれからの一〇年間に独占利益を取り込むことができると予想し、新聞の独占は終わったと考えている。

・短期成長をすべてに優先させれば、自問すべき最も重要な問いを見逃してしまう──「このビジネスは一〇年後も存続しているか」というものだ。数字はその答えを教えてくれない。むしろ、そのビジネスの定性的な特徴を客観的に考えてみる必要がある。

独占企業の特徴

・独占企業はそれぞれに違っているけれど、たいてい次の特徴のいくつかを合わせ持っている。プロプライエタリ・テクノロジー、ネットワーク効果、規模の経済、そしてブランドだ。

1.プロプライエタリ・テクノロジー
プロプライエタリ・テクノロジーは、ビジネスのいちばん根本的な優位性だ。それがあれば、自社の商品やサービスを模倣されることはほとんどない。たとえば、グーグルのアルゴリズムは、他社より優れた検索結果を生み出している。

2.ネットワーク効果
利用者の数が増えるにつれ、より利便性が高まるのがネットワーク効果だ。たとえば、友だちみんながフェイスブックを使っていれば、自分もフェイスブックを使うのが理にかなっている。誰も使わないソーシャル・ネットワークを選ぶのは変人だけだ。

・矛盾するようだけれど、ネットワーク効果を狙う企業は、かならず小さな市場から始めなければならない。

3.規模の経済
規模拡大の可能性を最初のデザインに組み込むのが、優良なスタートアップだ。ツイッターのユーザー数は、今の時点で二億五〇〇〇万を超えている。さらなるユーザーの獲得に多くのカスタム機能を加える必要はなく、成長が止まりそうな内的な要因はない。

4.ブランディング
本質よりブランドから始めるのは危険だ。

独占を築く

・ブランド、規模、ネットワーク効果、そしてテクノロジーのいくつかを組み合わせることが、独占につながる。ただし、それを成功させるには、慎重に市場を選び、じっくりと順を追って拡大しなければならない。

小さく始めて独占する

・どんなスタートアップもはじまりは小さい。どんな独占企業も市場の大部分を支配している。だから、どんなスタートアップも非常に小さな市場から始めるべきだ。失敗するなら、小さすぎて失敗する方がいい。理由は単純だ。大きな市場よりも小さな市場の方が支配しやすいからだ。最初の市場が大きすぎるかもしれないと感じたら、間違いなく大きいと思った方がいい。

・バラバラの数百万ユーザーの関心を求めて争うよりも、僕たちのプロダクトを本当に必要とする数千人に訴求する方がずっと簡単だった。スタートアップが狙うべき理想の市場は、少数の特定ユーザーが集中していながら、ライバルがほとんどあるいはまったくいない市場だ。

規模拡大

・どんなスタートアップもはじまりは小さい。どんな独占企業も市場の大部分を支配している。だから、どんなスタートアップも非常に小さな市場から始めるべきだ。失敗するなら、小さすぎて失敗する方がいい。理由は単純だ。大きな市場よりも小さな市場の方が支配しやすいからだ。最初の市場が大きすぎるかもしれないと感じたら、間違いなく大きいと思った方がいい。

・正しい順序で市場を拡大することの大切さは見過ごされがちで、徐々に規模を拡大するには自己規律が必要になる。大成功している企業はいずれも、まず特定のニッチを支配し、次に周辺市場に拡大するという進化の過程を創業時から描いている。

破壊しない

・今は、「破壊」という言葉がトレンディで新しい見かけのものを何でも指す自己満足的なバズワードに変わっている。一見ささいなこの流行は、起業家の自己認識を競争志向へと歪める点で問題だ。

・ペイパルも破壊的に見えたかもしれない。でも大企業に直接挑戦しようとしたわけじゃない。インターネット決済を浸透させたことでVisaの取引の一部を奪ったのは事実だ。店でVisaカードを使う代わりに、オンラインの買い物でペイパル決済をする人もいるからだ。でも、僕たちが決済の市場全体を拡大したことで、Visaは損よりはるかに得をしているはずだ。

 

人生は宝くじじゃない

・連続起業家が世に存在するということは、成功が単なる運とも言い切れない。数百万ドル規模のビジネスを複数立ち上げた起業家は何百人もいる。中でもスティーブ・ジョブズ、ジャック・ドーシー(*3)、イーロン・マスクは数十億ドル企業を複数生み出してきた。成功がほぼ運によるものだとしたら、こうした連続起業家はおそらく存在しないはずだ。

・あいまいな楽観主義以外の三つの見方は筋が通っている。明確な楽観主義は、思い描いた未来を築けば成り立つ。明確な悲観主義は、新しいものを取り入れず既存のものをコピーすることで成り立つ。あいまいな悲観主義では自己予言が的中する──期待が低くやる気もなければ、未来は暗いものになるだろう。でも、あいまいな楽観主義はそれ自体矛盾している。誰も計画を持たないのに、どうして未来が良くなると言えるのだろう?

・「リーンであること」は手段であって、目的じゃない。既存のものを少しずつ変えることで目の前のニーズには完璧に応えられても、それではグローバルな拡大は決して実現できない。

・ジョブズが残した最も偉大なデザインは、彼の会社だ。アップルは、新製品を開発し、効果的に販売するための明確な複数年計画を描いてそれを実行した。「MVP」なんていうちっぽけな考えは捨てよう。一九七六年にアップルを創業して以来、ジョブズはフォーカス・グループの意見を聞かず、他人の成功を真似ることもなく、念入りな計画によって世界を本当に変えられることを証明した。

・起業は、君が確実にコントロールできる、何よりも大きな試みだ。起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは、「偶然」という不公平な暴君を拒絶することから始まる。人生は宝クジじゃない。

 

カネの流れを追え

・一九〇六年、経済学者ヴィルフレド・パレートは「パレートの法則」、いわゆる「80-20の法則」を発見した。二割の国民がイタリア国土の八割を所有していることに気づいたのだ。自分の畑のえんどう豆のさやの二割から八割のえんどう豆が生産されているのと同じ現象だった。ひと握りのグループが、残りのライバルをはるかにしのぐというこのパターンは、自然界にも人間の社会にも見られる。

・分散に極端な偏りが出る「べき乗則」は万物の法則だ。それは僕らの周囲のあらゆる現象を支配しているために、僕らはふだんそれに気がつかない。

ベンチャーキャピタルの<べき乗則>

・この「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」作戦では、たいていひとつも当たらずに、ポートフォリオはゴミの山になってしまう。ベンチャーのリターンは正規分布ではないからだ。むしろベンチャーに当てはまるのは「べき乗則」だ─

・一握りのスタートアップがその他すべてを大幅に上回るリターンを叩き出す。だから、分散ばかりを気にかけて、圧倒的な価値を生み出す一握りの企業を必死に追いかけなければ、その稀少な機会をはじめから逃すことになる。

・僕たちのすべてのファンドに同じパターンが見られる。ベンチャーキャピタルにとっての何よりも大きな隠れた真実は、ファンド中最も成功した投資案件のリターンが、その他すべての案件の合計リターンに匹敵するか、それを超えることだ。

・ベンチャーキャピタルには奇妙な鉄則が二つあることになる。第一の鉄則は、ファンド全体のリターンを一社で叩き出す可能性のある企業だけに投資すること。これには度胸がいる。投資可能な案件の大半がここで消えてしまうからだ(たとえ成功している企業でも、そこまでのリターンを生むことは珍しい)。ここから第二の鉄則が導かれる。つまり、第一の鉄則による縛りが厳しすぎて、それ以外のルールは設けられないというものだ。

・大規模に成功できる可能性があるスタートアップだけを組み入れるのが、良質のベンチャーポートフォリオだ。

<べき乗則>をどう扱う?

・将来価値の問いに対するいちばん一般的な答えは、分散されたポートフォリオ──「すべての卵をひとつのカゴに入れるな」とよく言われるやつだ。最も成功しているベンチャー投資家でさえポートフォリオを組むと言ったけれど、べき乗則を理解している投資家は投資案件の数をできるだけ絞り込む。反対に、世間の知恵や金融の常識をもとにしたポートフォリオ思考では、分散投資こそが力の源泉だと考える。あれもこれも手を出してみる方が不確実な未来へのヘッジになるというわけだ。  でも、人生はポートフォリオじゃない──スタートアップの創業者だろうと、誰であろうと。起業家は自分自身を「分散」できない。ひとりで何十社も同時に経営できないし、その中のひとつがうまくいけばいいと祈ることもできない。もっと言えば、等しく可能性のあるキャリアをいくつも同時に進めて、人生を分散させることもできない。  学校ではそれと反対のことを教えている。学校教育は画一的に一般教養を受け渡すだけだ。

・重要なのは「何をするか」だ。自分の得意なことにあくまでも集中すべきだし、その前に、それが将来価値を持つかどうかを真剣に考えた方がいい。

・あえて起業するなら、かならずべき乗則を心にとめて経営しなければならない。いちばん大切なのは、「ひとつのもの、ひとつのことが他のすべてに勝る」ということだ。

 

隠れた真実

・カジンスキーは人間の目標を次の三つに分類した。
1 最低限の努力で遂げられる目標
2 真剣に努力しないと遂げられない目標
3 どれほど努力しても遂げられない目標

・隠れた真実は、探さなければ見つからない。

隠れた真実の例

・隠れた真実の存在を信じ、それを探さなければ、目の前にあるチャンスに気づくことはできない。フェイスブックも含めて多くのインターネット企業が過小評価されるのは、それがあまりに単純なものだからで、それ自体が隠れた真実の存在を裏づけている。振り返ればごく当たり前に見える洞察が、重要で価値ある企業を支えているのだとすれば、偉大な企業が生まれる余地はまだたくさんある。

隠れた真実の見つけ方

・どんな会社を立ち上げるべきかを考える時、問うべき質問は二つ──自然が語らない真実は何か? 人が語らない真実は何か?

・人間についての隠れた真実はあまり重要だと思われていない。おそらく、人の秘密を明かすのに立派な学歴はいらないからだろう。人々があまり語ろうとしないことは何か? 禁忌やタブーはなんだろう?  自然の謎も人間の謎も、解き明かすと同じ真実に行き着くことがある。もう一度独占の謎を考えてみよう。競争は資本主義の対極にある。

・秘密を探すべき最良の場所は、ほかに誰も見ていない場所だ。ほとんどの人は教えられた範囲でものごとを考える。学校教育の目的は社会全般に受け入れられた知識を教えることだ。であれば、こう考えるといい──学校では教わらない重要な領域が存在するだろうか?

 

ティールの法則

・偉大な企業はいずれも独特だけれど、どの会社もいちばんはじめに正しく行なっておかなくてはならないことがいくつかある。僕がいつもそればかり言っているので、友人たちはこれを冗談っぽく「ティールの法則」と呼ぶようになった。「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」という法則だ。

所有・経営・統治

・企業内の不一致の原因を考えるには、次の三つの役割を区別するとわかりやすい。
・所有:株主は誰か?
・経営:実際に日々会社を動かしているのは誰か?
統治:企業を正式に統治するのは誰か?

利害の一致

・スタートアップは高給を支払わなくていい。給料よりいいものを提供できるからだ──自社の所有権だ。自社株という報酬形態は、社員の意識を未来価値の創造へと向ける。

 

マフィアの力学

・「企業文化」は企業そのものから離れては存在しない。企業にとって文化とは持つものじゃない。企業そのものが文化だ。スタートアップとは使命を共有する人びとの集まりであって、良い企業文化とはその姿を反映しているにすぎない。

カルトとコンサルタントの間

・起業家は究極の献身の文化を真剣に受け止めるべきだ。生ぬるい仕事ぶりは心が健全なしるしだろうか? 単なる仕事と割り切った態度が、まともなやり方なのだろうか? カルトの対極は、アクセンチュアのようなコンサルティングファームだ。彼らに組織固有の際立った使命はなく、コンサルタントの入れ替わりが激しいために、長期的なつながりはまったく築けない。  どんな企業文化も、下の直線上のどこかに位置する。

・最高のスタートアップは、究極よりも少しマイルドなカルトと言っていい。いちばんの違いは、カルトは重要な点を間違って盲信しがちだということだ。成功するスタートアップは、外の人が見逃していることを正しく信奉している。

 

それを作ればやってくる?

・営業マンやそのほかの「仲介者」は邪魔な存在で、いい製品を作れば魔法のように販路が開かれると勘違いしている。特にシリコンバレーでは『フィールド・オブ・ドリームス』的な発想(「それを作ればみんなやってくる」)が一般的で、エンジニアは売ることよりもクールなものを作ることしか考えていない。でも、ただ作るだけでは買い手はやってこない。売ろうとしなければ売れないし、それは見かけより難しい。

マーケティングと広告宣伝

・マーケティングと広告宣伝は、バイラルな訴求方法のないような一般大衆向けの低価格品に効果がある。

・スタートアップにも広告宣伝が効くことはある。ただそれは、顧客獲得コストと顧客生涯価値を比べてほかのすべての販売チャネルが割に合わない場合に限る。

バイラルマーケティング

・プロダクト自体に友人を呼びこみたくなるような機能がある場合、それはバイラルする。

・バイラル成長の可能性があるような市場の中の、いちばん重要なセグメントを最初に支配した会社が、市場全体のラストムーバーとなる。

 

人間と機械

・成熟産業が低迷するにつれ、ITはものすごいスピードで進化してきたため、「テクノロジー」と言えばITそのものだと思われるようになった。今では一五億人が、ポケットに入るデバイスで世界中の知識を即座に手に入れることができる。今日のスマートフォンは人類を月に送ったコンピュータの数千倍の処理能力を備えている。ムーアの法則がこれからも続くとしたら、今後のコンピュータはさらに高い能力を持つことになる。

テクノロジーは人を補う

・コンピュータは人間を補完するものであって、人間に替わるものじゃない。これから数十年の間に最も価値ある企業を創るのは、人間をお払い箱にするのではなく、人間に力を与えようとする起業家だろう。

・人間と機械は、それぞれ根本的に異なる強みを持っている。人には意思がある──僕たちは計画を立て、複雑な状況で判断を下す。一方で、大量のデータを読み解くのはどちらかというと苦手だ。コンピュータはちょうどその反対で、効率的にデータを処理できる反面、人間にとってはしごく簡単な判断でさえ下せない。

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補完的ビジネス

・人間とコンピュータの補完的な関係は、単なるマクロレベルの事象じゃない。それは、卓越したビジネスを築く具体的な手段にもなる。ペイパルでの経験から、僕はこのことを身にしみて感じるようになった。

コンピュータサイエンスのイデオロギー

・この補完関係をこれほど多くの人が見逃しているのはなぜだろう? それは学校から始まっている。ソフトウェアのエンジニアは、人手を省くためのプロジェクトに取り組むことが多い。そのための訓練を受けているからだ。そもそも学者は専門的な研究によって名を上げる。彼らの目標は論文を発表することで、それは各自の縄張りを守ることを意味する。コンピュータサイエンティストにとってその縄張りとは、人間の能力を分解し、コンピュータでも訓練すればできるような特定の作業に落としこむことだ。

・最も価値ある未来の企業は、コンピュータだけでどんな問題を解決できるかとは問わないはずだ。人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどう助けられるだろうかと考えるだろう。

・強いAIは壮大な宝クジのようなものだ。勝てばユートピアに行ける。負ければスカイネットが人間に取って代わる。

 

エネルギー2.0

・クリーンテクノロジー企業が破綻したのは、どんなビジネスも答えを出すべき七つの質問をなおざりにしたからだった。

1 エンジニアリング
段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?

2 タイミング
このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?

3 独占
大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?

4 人材
正しいチーム作りができているか?

5 販売
プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?

6 永続性
この先一〇年、二〇年と生き残れるポジショニングができているか?

7 隠れた真実
他社が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか?

・これらの要素についてはすでに議論してきた。どの業界かにかかわらず、この質問のすべてに答えるのが優れたビジネスプランだ。もしきちんとした答えがないのなら、君はたび重なる「不運」に見まわれて、会社は破綻するだろう。七つの質問すべてにしっかりと答えられれば、運に恵まれ成功するに違いない。五つか六つに答えるだけでも大丈夫だろう。でも、クリーンテクノロジー・バブルの最中は、いい答えがひとつもないままに人々は起業していた。それは、奇跡を願うようなものだった。

販売

・クリーンテクノロジー企業は政府や投資家との付き合いはうまかったけれど、消費者のことを忘れていたようだ。彼らは高い勉強代を払って、現実の世界は研究室ではないことを学んだ──販売と流通はプロダクトそのものと少なくとも同じくらい大切だということだ。

社会起業家という神話

・環境テクノロジー起業家は、商業的な意味での成功だけを求めていたわけではなかった。環境バブルはまた、史上最大の「社会起業」現象であり、最大のどんでん返しだった。この慈善目的のビジネスというアプローチの根っこには、営利企業と非営利組織は対極にあるという前提が存在する。企業には大きな力があるけれど、利益追求という足かせをはめられている。非営利組織は公共の利益を追求しているけれど、経済全体の中では弱い存在だ。社会起業は両方のいいところを組み合わせ、「社会のためになることをして、利益を上げる」ことを狙っている。

・社会的目標と利益目標の板挟みは成功の妨げとなる。「社会的」という言葉自体のあいまいさはさらに問題だ。「社会的にいいこと」というのは、社会のためになることなのか、それとも単に社会の誰もがいいと見なしていることだろうか? 誰もが手放しで「いい」ということは、代替エネルギーのようなありふれたアイデアと同じで、もはやただの常識にすぎない。

・営利企業の強欲と非営利組織の善行とのぶつかり合いじゃない──両者の共通点こそが、僕たちの足を引っ張っている。営利企業がお互いを模倣し合うように、非営利組織も揃って同じ課題を追求する。

・本当に社会のためになるのは、これまでと「違う」ものだ。それが新たな市場の独占を可能にし、企業に利益をもたらす。最良のビジネスは見過ごされがちで、たいていは大勢の人が手放しで称賛するようなものじゃない。誰も解決しようと思わないような問題こそ、いちばん取り組む価値がある。

テスラ:七つの質問すべてに答えたスタートアップ

テクノロジー:テスラにはライバルメーカーも信頼を寄せるほど高い技術力がある。ダイムラーはテスラのバッテリーパックを使用、メルセデス・ベンツはテスラのドライブトレーンを、トヨタはテスラのモーターを使っている。GMはテスラの動きを追うためのタスクフォースを設置したほどだ。でも技術面の最も大きな成果はパーツや部品単体ではなく、多くの部品を組み合わせて高品質な製品にまとめ上げる能力だ。隅々まで行き届いたエレガントなデザインのモデルSセダンは、パーツの集合体を超える価値がある。コンシューマーレポート誌はこのモデルに史上最高の評価を与え、モータートレンドとオートモビルの両誌がこれを二〇一三年のカー・オブ・ザ・イヤーに選んだ。

タイミング:二〇〇九年、誰もが環境テクノロジーへの政府の支援が続くものと予想していた──環境ビジネスの創出は政治的な優先課題で、補助金がすでに予算に組み込まれ、温室効果ガスの排出取引を認める法案が議会を通過する見通しだった。だけど、じゃぶじゃぶの補助金が無限に流れ込んでくると誰もが思い込んでいた中で、テスラCEOのイーロン・マスクはこれが一度きりのチャンスであることを見抜いていた。二〇一〇年一月、オバマ政権のもとでソリンドラが破綻し補助金が政治的に取りざたされるようになるおよそ一年半前、テスラはエネルギー省から四億六五〇〇万ドルのローンを確保した。二〇〇〇年の半ば、五億ドル近い補助金なんて誰も想像しえないことだった。今でもそうだ。それが可能だった一瞬を、テスラは完璧に捉えたのだ。

独占:テスラは自分たちが独占できる極めて小さな市場からスタートした。ハイエンドの電気スポーツカー市場だ。二〇〇八年に発売された初代ロードスターは三〇〇〇台しか売れなかったものの、一〇万九〇〇〇ドルという価格を考えれば、無視できない金額になる。小さく始めたことで、テスラは少し価格の低いモデルSの開発に必要なR&Dにも着手でき、今では高級電気セダン市場もほぼ独占している。二〇一三年には二万台のセダンを販売し、より大きな市場へと将来的に拡大できる好位置につけている。

チーム:テスラのCEOは最高のエンジニアであり、最高のセールスマンでもある。だからその両方に秀でた人材を集められたのもうなずける。イーロンはチームをこんな風に言っている。「テスラに入社することは、特殊部隊に入るようなものだ。通常の軍隊も結構だが、テスラで働けばワンランク上に登れる」

販売:ほとんどの企業は販売を軽く見ているけれど、テスラはそれを真剣に受け止め、自社の販売網を持つことを決めた。独立系ディーラーに頼る自動車メーカーは多い──フォードとヒュンダイは製造だけを行ない、販売は他社に任せている。テスラは自社の販売店で販売とサービスを行なっている。従来のディーラー販売より初期投資ははるかに大きいが、このやり方なら顧客体験をコントロールでき、テスラのブランドを強化して、長期的には節約できる。

永続性:テスラはスタートダッシュを決め、誰よりも速く前進している。ということは、今後他社との差がますます広がるということだ。みんなが欲しがるブランドになったことは、明らかなブレークスルーの証拠だ。自動車は消費者にとっていちばん大きな買い物のひとつで、この分野で消費者の信頼を得るのは簡単なことじゃない。同業他社と違ってテスラはいまだに創業者が経営しているので、しばらくはこの会社が減速することはないだろう。

隠れた真実:テスラは、環境ビジネスへの関心が流行に左右されることを承知していた。特に富裕層は自分を「グリーン」に見せたがり、そのためには箱っぽいプリウスや不格好なホンダ・インサイトに乗ることもいとわなかった。そんな車に乗ってもクールに見えるのは、「地球に優しい」セレブたちも同じ車に乗っているからだ。そこでテスラは、単に乗っているだけで人を「クール」に見せる自動車を作ることにした。そのカッコよさに、レオナルド・ディカプリオでさえ、プリウスを捨ててより高価な(見かけも値段も)テスラ・ロードスターに乗り換えたほどだ。ほとんどの環境企業が差別化に苦労する中で、テスラは隠れた真実を発見し、その上に独自のブランドを築いた。それは、クリーンテクノロジーは環境に必要なものというより、むしろ社会現象であるという真実だった。

 

創業者のパラドックス

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・そのグラフからは創業者に共通する奇妙な特徴はわからない。普通なら、ひとりの中に正反対の特徴は共存しない。たとえば、ある人が金持ちでもあり、同時に貧乏だということはあり得ない。でも、創業者にはそれが起こり得る。スタートアップのCEOは現金はなくても紙の上では億万長者だということがある。鼻持ちならない嫌なヤツと魅力あるカリスマの間を行き来することもある。成功している起業家はほとんどみなインサイダーでありながら同時にアウトサイダーだ。成功すると、有名にもなるけれど悪名にもまみれる。創業者の資質をグラフにすると、正規分布の反対になる。

・独創的な創業者は、有無を言わせず決断を下し、忠誠心を呼び起こし、数十年先まで計画できる。逆に、訓練されたプロフェッショナルが運営する個性のない官僚組織は、ひとりの寿命を超えて存続するけれど、目先のことしか見ていない。

 

終わりに 停滞かシンギュラリティーか

・先の先まで見つめる起業家でさえ、今後二〇年から三〇年より先のことを計画できないとすると、遠い未来について言えることなどあるだろうか? 具体的なことはわからないけれど、大まかな輪郭を描くことはできる。

・宇宙規模のシンギュラリティを達成できるかどうかよりも、僕たちが目の前のチャンスをつかんで仕事と人生において新しいことを行なうかどうかの方がよっぽど大切だ。宇宙も、地球も、国家も、企業も、人生も、この瞬間も、大切なものはすべて、取り換えのきかない「一度限り」のものだ。  今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ること──つまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。古代人が初めて世界を見た時のような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで、僕たちは世界を創り直し、未来にそれを残すことができる。

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるかより)

 

このように、起業哲学的な内容を中心としていて、「スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ。」ということが一番根本の価値観としてあるのかなと思います。

そして、この価値観があるからこそ下記の質問を重視しているのかなと思います。

 

イケダハヤトさん天才起業家、ピーター・ティールが面接で必ず尋ねる質問:「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」 : まだ東京で消耗してるの?でこの本に関連したことを書いていたので、この部分を少し自分なりに考えてみようと思います。

採用面接でかならず訊く質問がある。「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」
ストレートな質問なので、ちょっと考えれば答えられそうだ。だけど実際には、なかなか難しい。学校では基本的に異論のない知識しか教わらないので、この質問は知的なハードルが高い。それに、その答えは明らかに常識外れなものになるので、心理的なハードルも高いからだ。明晰な思考のできる人は珍しいし、勇気のある人は天才よりもさらに珍しい。
(中略)だから、もしこれから一〇〇年間社会が変わらなければ、未来は一〇〇年以上先にならないとやってこないことになる。もし次の一〇年でものごとが急激に変わるなら、未来は手の届くところにあるということだ。未来を正確に予測できる人などいないけれど、次の二つのことだけは確かだ。未来は今と違う、だけど未来は今の世界がもとになっている。あの逆説的な質問への答えのほとんどは、異なる視点で現在を見ているだけだ。視点が未来に近づくほど、いい答えになる。

先ほどの逆説的な質問への僕自身の答えは、「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけれど、実はテクノロジーの方がはるかに重要だ」というものだ。

 

これって色んな人が答えていくと面白い質問だなって思ったので、三つの未来に分けて自分も答えてみます。

遠い将来(2050年以降)

将来(2020年以降くらい)

 

まあ、こんな感じかなって思うのですが、ただこの辺って賛成する人がまだまだ少ないだけで、ほとんどいないわけではないんですよね。そもそもこの答えが誰かが用意した答えに後乗りしている感が

もう少しエッジが聞いた答えを用意したいんだけど、かなり難しいですねいい答えを用意するのは。(だから面接の質問にしているんでしょうが)

 

そして、これにちゃんと答えることができている人が本書に出てきている人や、研究者だったらカーツワルツとかトフラーとかネグロポンテなんでしょうね。

日本の比較的新しい起業家だったら、株式会社ユーグレナの出雲さんやNewsPicksYusuke Umedaさんとかが近いのかなって思います。

 

これを読んだからってこの内容を簡単に実践できることはほとんどなさそうですが、非常に面白い本です。

 

 

関連記事はこちら。

天才起業家、ピーター・ティールが面接で必ず尋ねる質問:「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」 : まだ東京で消耗してるの?
ついに全米発売、「ゼロ・トゥ・ワン」の衝撃度 | オリジナル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
【書評】『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』:シロクマ日報:ITmedia オルタナティブ・ブログ
最先端の起業哲学:ピーター・ティール『ZERO TO ONE』 : 生み出す人になる(電子書籍サービスWOODY社長のブログ)

 

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