無業になるのは自己責任じゃない。 『無業社会 働くことができない若者たちの未来』

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認定NPO法人育て上げネットの代表の工藤啓さんと立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授の西田亮介さん無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)を読みました。

ニートや働かない若者を自己責任と批判する声は多いですが、若年無業者の実情を様々なデータでとてもわかりやすくひも解いている本です。

 

なぜ、いま「若年無業者」について考えるべきなのか

・「若年無業者は、自分とは全く無関係で、批判されるべき存在である」という認識が広く普及してしまっている。これらの認識の誤った点については、本書において、データと事例の双方から指摘していくが、こうしたイメージは実際の若年無業者のなかでは、極端なケースである。

・本書では、誰もが無業になりうる可能性があるにもかかわらず、無業状態から抜け出しにくい社会を「無業社会」と呼んでいる。

人間関係が喪失する無業状態

・人間関係のつながりや社会生活と、モチベーション、就労の間には、フィードバックループ(フィードバックが結果を増強すること)が観察できる。いずれかの要素がポジティブにある時には、他の要素よりポジティブになる。逆に、いずれかがネガティブなときには、全体がよりネガティブな方向へ向いてしまう。

・日本社会では、一度、無業状態になってしまうと、人間関係や社会関係資本、意欲も失ってしまいがちなのである。

人口減少社会の希少財としての若年世代

・世代を超えて若年無業者について考えてみるべき理由は以下の3点に集約することができる。

  1. 「若年無業の当事者に対する誤解の存在」
  2. 「若年世代の希少財化と就労支援の有用性」
  3. 「若年無業者の問題が日本の社会システムの歪みの典型的な象徴であること」

・最後に個人的なエピソードを付け加えてみたい。筆者の中で西田の専門は、情報技術と政治の関係や政策形成であり、若年無業者の問題は、自信が主体的にコミットしてきた問題ではなかった。この本で「誤解」と呼んでいる、誤った認識を全く持っていなかったといえば、嘘になると言わざるを得ないだろう。しかし、5年ほど前に、NPO法人育て上げネット工藤啓氏と知り合ったことで、この問題の実情や問題を期せずして一般の人より深く知ることとなった。工藤氏からの教わった事実やデータは、「自分が現在、普通に生活できているのは、偶然の産物かもしれない」というような懐疑を持つのに、十分なものだった。

「当たり前」ではない若者達を「自分事」として考える

・「無業になるのは特別な一握りの若者だけのものではない」としたが、このような表現はいたるところで散見される。

・働くことが「当たり前」という考えの一方で、働ける・働き続けることが「当たり前」でなくなりつつある。

 

「働くことができない若者たち」への誤解

結局、自分のやりたい仕事を選んでいるだけでは?

・「平成25年版 子ども・若者白書」の「就業希望の若年無業者が求職活動をしていない理由」を見てみると、無業である理由として「病気・けが」の回答が圧倒的に多い。20代後半から30代後半では30%に上り、30歳から34歳では40%を超えている。

・「希望する仕事がありそうにない」「急いで仕事につく必要がない」という回答は概ね10%しかない。

・「無業方抜け出したいのであれば、誰もが敬遠する業界や職場で働けばいい」という考えは安直だ。人は機械ではない。それぞれに向き不向きがあるからこそ、「マッチング」という言葉が求職者、採用希望者から頻出するのであり、無理をして就職しても仕事を続けられない。そればかりか心身を壊してしまう可能性もある。

親のすねをかじれるから働かないのでは?

・(前略)甘やかす親がいるから無業でも生きていけるのではなく、正社員でない限りは同居以外の選択がない社会状況に着目したい。

・日本は、家族を細小単位として捉え、個人の状況は個人のものとしてみることが少ない。欧州の支援者に聞くと、若者が困窮している状況にあれば、親がどれほど経済的に恵まれていても、若者は必要な支援を受けることができると言う。家庭の所得や親子間の関係性に左右されない支援の枠組みが整っている。

(前略)若年無業者の家庭では、大学進学のみならず、子どもにそこまでお金をかけられる余裕を持たない、家計の苦しさが浮かび上がる。

彼らは自分の現状を改善しようと思っているのか?

・若年無業者を取り巻く若年層が語られるとき、自己認識として「考えすぎてしまう」という表現が見られ、一方、外部からの言葉で目立つのは「とても真面目である(真面目すぎる)」という言葉がある。

・「考えすぎること」と「真面目であること」は必ずしも対になるものではないが、少なくとも自身の置かれた現状を理解しようともせず、ただただ惰性に流されて生きているという像は描けない。むしろ、考えすぎる性格が足かせとなって行動できなくなってしまい、頑固なまでの真面目さが周囲との軋轢を産みやすくさせたりしているようなことも考えられる。

・何十社から不採用の通知を受けたり、長期間ーときに10年以上ー孤立したりしていることでポジティブな自己認識が不可能になってしまっているように思える。

なぜ、会社を辞めてしまったのか?

・若年無業者の4人に3人は過去に働いていたけんけんがあり、一度も働いた経験がない無業の若者は24.5%ほどである。

・類型ごとに差異はあるが在職期間を見る限り、かなり長期にわたって職場に定着していたことがわかった。では、彼らはなぜ退職したのだろうか。まず「契約期間満了」による退職が大きな山になっているが、ここでは契約期間延長の話があったのかなかったのか。延長の打診または正社員としての採用意向が企業側から出されたのか、についてはわからない。その他の退職理由を類型ごとに追っていくと、求職型では「労働条件が悪い」「業務内容が合わない」「上司との人間関係」が選択されている。

彼らはどのような支援を求めているのか?

・若年無業者の類型にかかわらず、共通する来所目的は、「働く自信をつけたい」である。多くの若者が働くことに自信が持てていない。

・新しい職場では未体験の業務内容を含んでいるものである。確かに、「最初は不慣れで当たり前であり、仕事に取り組んでいれば、そのうち少しずつできるようになっていく」ことは正論だが、それは自分の適応能力(学習能力)に肯定的な気持ちが抱けるだけの経験や自信が備わっている場合にのみ受け入れられる言葉である。

・若者が抱える悩みは非常に個別的でありながらも総体として求めている支援を分析したとき、前に踏み台したい気持ちを現実にするための手助けを希望していることがよくわかる。

・支援を求めるというところまでたどり着けない若者がいるのも事実である。

・幼少期からしんらいできる人たちに支えられて生きてこなかった若者にとって、支援を受けるということがそもそも思考に組み込まれていない。また、誰かの助けを受けることが何かしらのリスクを伴うものであると教えられて育った若者もいる。

・私たちは「何で信頼してくれないんだろう」と考える以上に、「何が彼/彼女に他者を信頼させない状況を作っているのか、それは今からでも解決できるものなのか」を考える。そのような若者にもかかわっていると、支援を求めていないというより、「誰かに助けを求めてもいい」という考えにおよばないようだ。

 

「無業社会」は、なぜ生まれたのか?

・従来の日本社会では、若年世代は、社会的弱者の中心世代とは考えられてこなかった。したがって、若年世代は、それらの議論の主たる対象にはならなかった。若年者の数が多く、社会全体が、特に経済的な意味で成長を続けていたので、「いずれ豊かになるはず」という希望を神事、若年時における貧乏と貧困は「美徳」とさえ見なされていた。だが、こうした前提は。現在では成立しなくなった。

・「頑張れば報われる社会」としての、日本社会、とくに高度経済成長期以後の自明とも思われた価値観に対する懐疑が芽生えるようになった。

・日本的経営における雇用習慣のもとでは、一度、こうした企業の人事戦略の外部に出てしまうと、外資系企業を渡り歩くような傑出した能力やスキルを持っている人はともかくとして、再参入が難しいことがわかるだろう。

・日本の社会福祉は、セーフティネットを構築するための主体的な構想の帰結ではなかった。いっそうの経済成長を目的とした、従来の社会福祉と同様の、社会経済状況への場当たり的対応のなかで発展してきたものである。

・「日本型システム」にいったん参加しそびれたり、抜け出してしまったりすると、激烈な競争環境や不利な立場に立たされてしまう状況と構造。

・仮に「日本型システム」のなかに入ったとしても、なんらかの事情でつまづき、外に出てしまった場合にも、そこから自らの力でやり直していくことがきわめて難しい状況におかれる。

・企業社会からの脱落が社会からもこぼれ落ちてしまう一因に、日本型システムのもとでは会社が擬似的な共同体としての機能を占有していたことが指摘できる。会社を辞めることで、平日昼間におkる主要な社会参加の機会が失われてしまうのである。

 

「無業社会」と日本の未来

生涯のコストギャップは一人1億5000万円

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貧困 格差、低所得者対策 ・格差、低所得者対策に関する資料より)

・若年無業者の問題の放置は、社会保障費の無秩序な増大を引き起こしかねないのだから、日本国民である以上、あらゆる世代の人々にとって、この問題を「当事者の自己責任」として切断してしまうことは、事実上不可能なのである。

・若年無業者の問題の根本的な解決策は、①現段階で困窮している人を緊急避難的に救済すること、②すでに若年無業者になってしまっている人に、早く就労できるように促していくこと、③また無業状態になってしまったとしても、再び労働市場に参入できるような機会と仕組みを、社会のなかに埋め込んでいくことにつきる。

 

若年無業者を支援する社会システムのあり方

・具体的な現場の支援施策の拡充以外に、どのような概念に基づいて、支援を構想すべきなのだろうか、いくつか提案してみたい。キーワードは「包摂性」「連続性」「再挑戦への支援」である。

 

「誰もが無業社会になりうる社会」でのNPOが果たす役割

・厳しい雇用環境や社会情勢のなか、誰もが、それもあっという間に無業状態になってしまう社会においてNPOはどのような役割が果たせるのか。それは現場で小さくとも成功事例を作り、社会に発信していくことだと考える。

・未知な漁期に踏み込むNPOが、その経験や知見を生かしてより効率的、効果的に、大きな力にしていこうとしたとき、現場でしか蓄積できないデータは様々な価値に変容する可能性を秘めている。

・NPOが挑む社会課題は、スタートの段階では誰も気がついていない、または、ほとんど認知されていないことがある。若年無業者についても、まだまだその言葉すら認知されていない社会課題である。そして多くの場合、NPOが単体で解決しようと思っても、太刀打ちできないほどの多くの壁が立ちはだかる。それでもなお、対峙する課題に対して少しでも貢献できる環境を作る、機会を提供するためには、その解決のためのエコシステム(生態系)を作らなければならない。

・そのプロセスとしては、まず社会課題の存在を知らせていく必要がある。知らない事象に対して人は関心の持ちようがない。認知があって初めて、その課題に関心を持つようになり、解決のために手を貸していただける可能性が開ける。

無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)より)

 

改めて、印象的だった部分をまず抜き出して、整理してみます。

  1. 誰もが無業になりうる可能性があるにもかかわらず、無業社会から抜け出しにくい社会を「無業社会」
  2. 日本社会では、一度、無業状態になってしまうと、人間関係や社会関係資本、意欲も失ってしまいがちなのである。
  3. 働くことが「当たり前」という考えの一方で、働ける・働き続けることが「当たり前」でなくなりつつある。
  4. 「日本型システム」にいったん参加しそびれたり、抜け出してしまったりすると、激烈な競争環境や不利な立場に立たされてしまう状況と構造。
  5. 生涯のコストギャップは一人1億5000万円

 

まず、無業社会の定義として、「誰もが無業になりうる可能性があるにもかかわらず、無業状態から抜け出しにくい社会」とあります。

そして、無業になりうる可能性として3番目があり、抜け出しにくい構造として2・4番があります。この問題の構造を放置し続けると、5番のように社会全体の負担になっていきます。

 

少し違う例を出すと、大企業で働いていた人が独立したり起業したりするとそこで関係性が途絶えてしまうことがよくあると聞きます。このように仕事・働くことにその人の繋がりなどが大きく規定されているということです。

このような状態で、無業になってしまうと人間関係が一気に希薄になってしまうために、自信を持ちにくくなります。

この状態を放置し続けると、税負担について書かれていますが、社会全体で損をすることになります。

若者支援は社会投資であると、工藤啓さんはよく言っていますが、このように働けない若者を放置するか、働けるように寄り添っていけるかで社会は大きく変わります。

 

そして、そのために誰もが簡単にできることの一つは若年無業者に自己責任を押し付けないこと、ナノかなって思います。

 

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