いじめられっこが熱血教師へ そしてTeach for Japanを立ち上げるまで! 『グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」』

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グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」Teach For Japan(TFJ)の代表理事である松田悠介さんが、どのような経緯で教師を目指し、ハーバード大学院に行き、そしてアメリカで絶大的人気を誇り成功しているNPO法人であるTeach For America(TFA)の日本版である、TFJを設立に至ったかという経緯を主に書いた本です。

松田さんの教育理論やTFJを組織化するにあたってぶつかった壁それをどのように解決していったかのノウハウ等などとにかくたくさんの内容がてんこ盛りの本です。

教師になりたい等の教育に関心ある人はもちろん、何か子供の問題に関心ある人、社会起業家になりたいと思っている人にオススメの本です。

 

 

TFAは、なぜ、グーグル、ディズニーよりも就職先として人気なのか

・TFAはアメリカで今、最も成功している非営利団体と言っていい。2010年、全米就職人気ランキング(人文学系)で、グーグルやアップル、ディズニーといった名だたる大企業を押さえて、一位になったのが、このTFAだ。

・TFAの選抜で重要なのは「リーダーシップがあるかどうか」だ。リーダーシップといえば、日本では先頭に立って皆を率いるような「リーダー」としての素質のことをイメージする人が多いと思うが、それだけではない。集団を引っ張って行くことだけではなく、、目標を設定、共有してその集団をまとめられるかどうかというのもリーダーシップだ。

・難関かつハードな仕事内容であるにもかかわらず、どうして多くの学生がTFAで働くことを希望するのか。もちろん、自分が教えることによって子どもたちの成長を実感できることは大きいだろう。それだけではなく、「格差社会を変えたい」とか「社会にインパクトを与えたい」という思いを持ち、仕事にやりがいを求める学生が増えているからだ。

・教育難関校に派遣されたTFAの教師は実務を通してさまざまな力を身につける。なかでも起業が評価しているのは次の3つだ。
①「リーダーシップ」
②「コミュニケーション能力」
③課題解決力

学生がTFAに殺到するもう一つの理由は自己成長だ。

・「リーダーシップ」は、今教師にもっとも必要とされている能力の一つだ。教区現場で子どもたちと向き合い、より効果的な指導を行い、そしてクラスをまとめられるかどうかは、教師のリーダーシップにかかっている。

・「コミュニケーション能力」は生徒指導や、保護者対応、同僚との関係構築において基礎となるものだ。特に困難を抱えている子どもたちは大人を信頼していない。子どもたちの立場を理解し、彼ら・彼女らに寄り添うコミュニケーションを意識することが信頼関係を構築する一歩目だ。質の高いコミュニケーションをとれることで、問題の早期解決につながるケースがある。

教師という職業には、「課題解決力」も必要だ。教育現場が抱えている問題は、じつに多様といえる。地域によって問題の傾向は異なるし、同じ地域や学校内でも子どもによって抱えている問題は違う。(中略)ビジネスで成功するのは鉄板の成功法則を持っている人ではなく、その都度、状況に合わせて課題を見つけ、それを解決に導くことができる人だ。

・リーダーシップ、コミュニケーション能力、課題解決力。教師が子どもと向き合うときに備えておかなければ行けない力は、そのままビジネスでも役立つ。だから優秀な学生がTFAに殺到し、企業もまたTFA卒業生を高く評価するのだ。

・僕はこれから日本でも、このようにNPOでの体験をキャリアをとしてとらえる企業や学生が増えてくるのではないか、と期待している。

・「社会にインパクトを与えたい」「世の中をよくしたい」そして「ワクワク仕事がしたい」と、安定よりも人生の目的や、仕事のやりがいを選択して、起業したりNPOを立ち上げる人も少なくない。

・僕は企業の人事担当者にも営業をしているが、彼らの話を聞いていると、採用側も新卒採用というシステムに対して、非常に問題意識を持っていることを感じる。

・終身雇用が崩れ、自己成長の場としてNPOが注目を集める時代は、日本でももうすぐそこまで来ている。それが僕の実感だ。

・キャリアは本来、もっと自由なものだ。やりたいことが明確になれば、じつは僕たちの前には数多くの選択しが広がっている。そしてこの職業しかない、と決めてしまうことは本当にもったいないと思う。

 

なりたい職業は教師

・高校時代の僕にとって、教師はなりたい職業だった。それもただの教師ではない、憧れていたのは体育教師だ。僕がそう考えるようになった原体験は、中学生のことのいじめ体験にある。そのいじめかた抜け出すきっかけをつくってくてたのが、そのときの体育教師だった。

・僕がいじめられていたのは、中学受験を経て入った中高一貫の男子校だった。きっかけは、よく覚えていない。今でこそ身長180センチの長身だが、中学一年のころはせいぜい身長が150センチあるかないかで、体重40キロ。整列すると前から2番目で小柄だったせいか、いつのまにかガタイの大きい柔道部の同級生に目をつけられた。性格のせいもあったかもしれない。今でこそ「熱血!」とか「熱い」とかいわれるが、そのころの僕はひとことでいえば「無気力」。何をするにも、「ダルイ」とか「面倒」という思いがあり、心の底から楽しいと思えることはまだ見つかっていなかった。

・いじめのことは担任の先生や親など誰にも相談できなかった・これも精神的に辛かった。いじめられている子に対して、「救いの手を求めればいいのに」という大人もよくいるが、自分から相談できるのは本当に強い子どもだけだ。(中略)その点で僕は幸運だった。いつもアザを作っている僕を、そのとき所属していた陸上部の顧問だった松野稔先生が何とか気にかけてくれたのだ。

・いじめお解決には、さまざまなアプローチがあると思う。いじめている生徒を叱ったり、いじめている生徒といじめられている生徒を物理的に引き離す方法もある。ただ松野先生は違った。「どうすれば強くなれるのか、一緒に考えよう」そういって一緒に悩んでくれた。

・先生はあえて答えを与えなかった。それが、自分にとってすごくためになった。答えを自分で見つけると納得感が違う。教師は答えを教えるのではなく、生徒が自分で答えを見つける手伝いをしてあげる。しれは松野先生から教わったことで、今でも僕が信条としていることだ。

・このいじめを自分の力で克服した経験が僕の人生を変えたといっていい。

・この経験から「子どもはたとえ一人でも”向き合ってくれる大人”がいるだけで救われる」「子どもを指導するときには、半歩先を照らす」という、今の僕の根底にある2つの信条が生まれた。

コーヒーショップで手づくり無料塾を始める

。現場で子どもたちと向き合うためには、理論だけではなく実践の経験が必要だ。それが大学が与えてくれないのであれば、自分で作るしかない。そう考えて大学3年になって始めたのが、手づくり無料学習塾だ。普通にアルバイトとして塾講師や家庭教師をやる選択肢もあったかもしれない。ただ、既存の塾は教材などいろいろと環境が整っているし、もともと勉強に対して前向きな子どもたちが多い。そこで子どもたちと向かい合うより、何もないところから始めた方が、より学校の実態に近い気がしたのだ。

精力的にビラを配ったところ、最終的に8人の生徒が集まった。(中略)ただ驚いたこともあった。8人全員がひとり親家庭だったことだ。

・日本尾の教育問題は、貧困と密接につながっている。

・学習塾を始めて、僕の想像を超えていたことがもう一つあった。誰ひとりとして、真面目に勉強する気がないのだ。考えてれば、これは当然だった。彼らの多くは、親に「行ってこい」と言われたからやってきただけ。なかには「友達に誘われたから」という子どももいたが、どちらにしても自主的に勉強しにきたわけではない。(中略)勉強することに何の意味も見出していないのだ。これは子どもたちだけのせいではなく、勉強する意味を教えてこなかった大人たちの責任だ。

・大学の座学に自分の経験を照らし合わせて考えると、勉強に主体的に取り組んでもらうには、子どもたちが自ら目的を見つけ、本心から納得することが書かせなかった。そう”半歩先を照らす”のだ。そこで僕は雑談から始めて、まずは信頼関係を結んでいくことにした。勉強はそれからだ。

・質問を子どもたちのペースに合わせて投げかけていけば、子どもたちは自分で答えを見つけてくれる。そう、かつて僕が松野先生にそうしてもらったように、半歩先をてらしてあげれば、あとは自分で歩き出すのだ。

・目標に向かう意欲があれば、遅れはいくらでも取り戻すことができる。いつから勉強を始めるのかということより、何のために勉強をするのかという目的意識のほうが、ずっと大事だ。

・はじめから勉強ができない子はひとちもいない。学校の成績が悪かったのは、家庭環境や半歩先を照らしてくれる大人の不在のせいであり、本人の素質はそれほど関係ない。勉強に適した環境があり、自発性を引き出してくれる大人がいれば、子どもたちは自分の力を最大限発揮しようとする。

 

教育現場の「理想」と「現実」

・教師は報われない仕事だという人がいる。長時間労働なので、労働時間に換算すると給料は決していいほうではないし、何かとバッシングの対象にもなるからだ。しかし、実際に教師になってみて、そんなことはないと実感した。むしろ結果がすぐに見える「報われる仕事」だ。きちんと準備しておもしろい授業をすれば、生徒はきちんと食いついてくれる。ときには空振りもあるが、それも含めて生徒は正直だ。自分がやったことがダイレクトに現れるという意味で、教師ほどおもしろい仕事はない。

・学級崩壊の原因は生徒の側ではなく、先生側にあると思っているが、僕は学級崩壊になってしまった先生を責めるつもりはない。この問題の本質は先生を取り巻く環境にあり、僕自身もそうなっていた可能性がまったくないと言い切れないからだ。学級崩壊の問題は、元をたどると教師の多忙化に突き当たる。

自分で学校をつくりたい

・自分ひとりで変わった授業をやっていても、それが大きな波となって生徒全員にはとどかない。つまり、新しいことを考えついて実行しても、賛同して一緒に挑戦してくれるような仲間がいないのだ。

(前略)そうした問題意識と僕自身が抱えていた閉塞感が一緒になったとき、突然「じゃあ、自分で学校をつくろう」という思いが湧いてきたのだ。

・同じような問題意識を抱えている仲間は絶対にいる、となぜか確信していた。普通の学校でも言いし、フリースクールでもいい。僕の理想とする”半歩先を照らす教育”に共感してくれる先生と生徒を集めて、先生たちが120%の力で教えられる学校ができたら、先生も生徒も、そして僕もハッピーになれる。本気でそう考えたのだ。

・やりたいことができたら、そこに向かって一直線に突っ走るのが僕のやりかただ。

・教師は教育のプロだが、学校経営には別の知識やスキルがいる。学校をつくるためには学校経営についてきちんと学ぶ必要があるだろうと考え、いじめを克服したときと同様、ネットや図書館で文献を片っ端からあたることにした。

・「教育大学員」であれば学校経営が学べるだろうと、まず日本国内で教育分野のマネジメントやリーダーシップを学べるところを調べた。しかし、数がほとんどない。コースとして用意されているところもあったが、カリキュラムやシラバスがよくわからなかったり、そもそも教えている教授が実践者でなかったりして、あまり魅力を感じなかった。

・一方、質、量ともに充実しているのが、アメリカだった。スクール・リーダーシップを学べるコースがたくさんあったし、それぞれの授業内容に魅力がある。そもそも日本で学校経営を教えている教授も、アメリカの事例を研究している人が多い、それならば直にアメリカで学んだ方が理解が早いはずだ。(中略)そこで、候補に残ったのがカリキュラムが充実しているハーバードだ。

そして自分を追い込むために、体育教師がハーバード目指す遠き道のりというタイトルでブログも始めた。

 

体育教師、ハーバードへ留学する

・ハーバードに留学して良かったことは色々あるが、日本の教育システムの素晴らしさを再発見できたことも、その一つかもしれない。

・ハーバードの講堂でウェンディーの講演を聞いて、僕はスケールの違いに圧倒された。僕は日本の教育の抱える問題を、学校づくりを通して、解決しようと考えていた。しかしウェンディーは学校の枠を超え、全米規模で教育問題を解決しようとTFAを立ち上げた。しかも既に実績をあげているのだから、ケタが違う気がした。

日本でTFAが根付かない3つの理由

・TFAモデルを日本で展開できるかどうか、約半年かけて自分なりに分析したところ、嬉しくない結論にたどり着いた。日本では、TFAモデルは根付かない。これが僕の修士論文の結論だった。

・まず1つは、寄付文化の有無だ。NPOは事業を行うことで、収益をあげているところもあるが、TFAは収益事業を持たず、原則的に一般市民や企業からの寄付で成り立っている。それが可能なのは、アメリカには伝統的な寄付文化が根付いているからだ。

・2つ目の理由が転職文化の違いだ。TFAのプログラムは2年間だ。プログラム終了後、そのまま教育現場に残る人もいるが、雇用が保障されているわけではない。参加者の多くは、2年でまた別の職場に転職することになる。それでも応募者が殺到するのは、アメリカは中途採用が中心で、転職がごく普通に行われているからだろう。

・3つ目の理由が、教員免許制度だ。アメリカは、教員免許を持たない人でも教壇立てるしくみがいろいろある。だから医学部や法学部の学生など、教育学部以外からも優秀な学生を幅広く集めることができる。しかし、日本には今のところ教員免許がない人が先生として働けるしくみがない。教員免許を持った学生だけを対象にすると、日本の教育界に与えるインパクトも限定したものになってしまうだろう。

コンサルに就職して、NPOを立ち上げる力を養う

・ハーバード留学も終わりに差しかかり、TFAの日本版を立ち上げという具体的な目標が固まった。次は、それをどうやって実現するかだ。教育分野におけるリーダーシップやマネジメントは、ハーバードでの濃密な1年の中で、それなりに磨かれたという自負がある。しかし、学校とNPOでは、運営の仕方が違うはずだ。TFAの日本版をつくるなら、もっと広い意味での組織運営やマネジメントを学ぶ必要がある。そうした知識やスキルを学ぶなら、次は大学ではなく、企業の実践の場がいい。(留略)プライスウォーターハウスクーパース(PWC)という世界最大級のコンサルティングファームに受かってしまったのだ。

・全ての出来事には、何かしらの意味がある。最初はそれぞれの出来事が何を意味するのかわからなかったが、ハーバード留学をきっかけにバラバラのピースが組み合わさって、ようやく1枚の絵になった。僕が経験したすべての出来事は、僕が中学のころに体験したように、子どもたちにきちんと向き合いたい、という思いがつながったものだ 僕はきっとこれからの日本の教育を変えるためにハーバードに行ったんだ。そう、そこで僕は「天職」に出会ったのだ。

 

挫折と再出発

・教育格差のある子どもたちを、TFAモデルで笑顔にしたい。そう目標を定めた後僕は、アメリカから帰国した夏、さっそく勉強会兼TFA日本版の準備会を立ち上げた。メンバーは主にブログを通じて知り合った仲間たちだ。

・回を重ねるごとに人数が増えて勉強会は盛り上がりを見せたが、同時に混乱も起きていた。TFA日本版をつくりたという思いはみんな同じだったが、元教員、学生や社会人など年齢や経験もさまざまな人が参加しているため、コミットできる時間も、それぞれの思惑もバラバラだったのだ。

・メンバーの意識の違いがどんどん大きくなってくる中で、事件は起きた。ついにメンバーのひとりが「僕は、持てる限りの時間すべてをこの組織にコミットするので、ぜひTFAの立ち上げを任せて欲しい」とリーダー宣言したのだ。そしてそれを指示する表明をした人も何人か出た。

・子どもたちのために、早く会を立ち上げよう、走りながら考えよう、そう主張するメンバーの思いもわからなくはなかった。でも僕としては、やるからにはアメリカのように、日本を返る大きなインパクトのあるNPOにしたかった。そして自分の論文で結論を出してしまった、日本でTFAモデルができない3つの問題にもじっくり取り組んでクリアにしてから前に進みたかった。

・そして、この事件をきっかけに、勉強会は一旦解散になった。

本気の姿勢が人を動かす

・不思議なもので、会社を辞めた途端に物事が動き出した。顕著だったのは人だ。それまで遠巻きに様子を見ていた人たちが協力してくれるようになったのだ。

・思いを強くもち、本気で発信し続けていれば、協力者が少しづつ集まるのだと当時から強く感じた。

ついに実績づくりとして学習支援事業を開始

・学校への教師派遣は、受け入れ先である教育委員会の協力が不可欠だ。先生の採用自体は各地方自治体が行うが(つまり給与は地方自治体が出す)、採用を決めるのは各教育委員会。だから、まず教育委員会へのアプローチが必要になる。(中略)だからまずは教育委員会の方たちを納得させれるだけの実績を作らなくはいけない。

・そこで実績づくりと具体的なプログラム設計のために始めたのが、学習支援事業だ。学習支援事業は、学校とは別の場所で、貧困を中心に何らかの事情で教育が遅れている児童を対象に勉強を教える事業だ。

・この学習支援事業は、教育委員会へのアピールも兼ねていた。TFAのモデルを説明してもピンとこないという人に学習支援事業の現場をみてもらうことができれば、僕たちがやろうとしていることの中身をわかりやすく伝えられる。学習支援の効果が出て児童たちの成績が上がれば、実績としても評価してもらいやすい。

生徒がいない

・問題を抱えている子どもは間違いなく多い。しかし、「勉強で問題を抱えているお子さんはいませんか」と呼びかけても、無効から手を挙げてくれることは稀なのだ。

・僕たちの呼びかけにすぐ応えてくれるのであったなら、日本での教育問題は深刻化していない。

・日本では貧困を恥としてとらえて隠したり、親自身が子どもの教育に関心がないなど、何かしらの事情で、問題が表に出てこないからこそ、子どもの教育が遅れがちになるのだ。「日本ではアメリカと違い、教育格差なんてない」と言う人も多いのも、できるだけ貧困を隠す慣習だからだと思う。

学習支援で見えてきた子どもたちの闇

・学習支援事業を行っていく中で、環境を整えてあげれば、子どもたちはどんどん伸びるということがわかった。元からできない子どもはいないのだ。生徒にきちんと向き合うことで、生徒も勉強に興味を持ってくれるのだ。

・学習支援事業にやってくる子どもたちの家庭環境は、けっして良好とはいえないケースが多かった。貧困でぎりぎりの暮らしを強いられていたり、フィリピン人のシングルマザーで日本語を話せなかったり、親がネグレクト(育児放棄)をしていて、「勝手にやって。うちにいなくてせいせいする」と言われたこともあったそうだ。

・親にもそれぞれ事情があるので、一概に親を責めることは出来ない。ただ、そうして生まれた環境が子どもにとってハンデになってしまうことも事実だ。子どもは生まれてくる場所を選べないのに・・・。

・僕たちにできるのは、教育面で子どもたちが抱えたハンデを軽くしていくこと。学習支援事業を進めていくうちに、自分たちの使命をあらためて認識させられた。

3・11の東日本大震災でわかったこと

・原発事故が簡単に収束しないとが分かり、結果的に夏前に多くの子どもが東京の学校に転校した。ただ、学校に通わなかった期間が数ヶ月あったために、他の子どもたちと学力に大きな差がついてしまった。その結果、地元ではクラスでトップだった子が普通の子になり、普通の成績だった子は勉強ができない子になってしまった。子どもの旧主力を考えると、多少の奥手はいくらでも取り返せる。でもいきなり成績が落ちてしまうと自尊心が傷ついて、「どうせ自分はダメな人間だ」と考えるようになってしまう。しかも、慣れない東京の生活で、家族もバラバラだったり、状況も好転せず、気持ちも傷つきやすくなっている。それが学習の妨げになるのだ。

・こうした場合、自尊心を取り戻すきっかけを教えてあげることが学習支援の最初のステップになるということが分かった。

・たった数週間だけでも、子どもたちには変化が起こる。

・こういった子どもたちは、弱い立場の悲しさを知っているから、人を大切にする。そして困難な状況を乗越えた経験を持っているからこそ、強い人間に成長する。だからこそ、今困難な状況にいる子どもたちが抱えているハードルを取り除いてあげることが必要だし、それができれば、将来きっと良い教師、良いリーダーになれるだろうと信じている。

 

教育界でのイノベーションを目指す

35人学級でクラスに5人以上は援助なしに学校生活をおくれない子どもがいる

・この事業を始める時のいちばん高い壁が「日本にも貧困があり、教育格差がある」という認識をしてもらうことだった。

・現在、日本全国で修学援助の対象になっている児童・生徒は155万人以上(2010年文部科学省調査)。これは児童・生徒の全体の15%以上で、6〜7人に1人が援助を受けている計算になる。35人学級なら、クラスの5人以上は援助なしに学校生活ができない子どもがいる。これが今の日本の現実だ。

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出典:文部科学省(2010)、平成22年度 文部科学白書

・貧困は目の前にあるのに、どうして僕たちはそれに気付かないのか。それは貧困世帯がまんべんなく存在しているからだ。

・アメリカは貧困率100%に近い地域とほぼ0%の地域の両極端に分かれている。しかし、日本はどの地域も貧困率15%というイメージだ。こうなると、貧困ではない大勢の人たちに紛れてしまって目立たない。さらにそういった層の人たちは積極的に貧困状態にあることを主張したりしない。

教育格差は、貧困の再生産につながる

・世帯年収と子どもの学力に相関があることは明らかで、世帯年収が低い世帯の子どもほど、学校の勉強についていけていない。

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出典:文部科学省、「平成19・20年度 全国学力・学習状況調査

努力させてくれる環境があったか

・教育に関してこうした話をすると、「自分は努力して勉強してきた。そういった人たちは努力が足りない」という人が必ずいる。しかし、考えてみて欲しい。貧困家庭にはまず努力できる環境がない。食事すら満足にできなかったり、ノートや鉛筆を支給されてもそれを開いて使う場所がない。親からの暴力で、「安全な場所」を確保するのさえままならない子もいる。そんな中でどうやって勉強への意欲が生まれるのか。努力するためのスタートラインに立つためには、あまりにもたくさんのハードルを抱えているのだ。

日本は、家庭からの持ち出しに頼り、教育投資が少ない

・貧困が教育格差を生み、教育格差があらたに貧困を生む。こうした悪循環を断ち切るのが高教育に課せられた役目の1つだ。しかし日本の公教育はその役目を果たせていない。

・問題として教育分野の公共投資が少ないことがあげられる。要するに、政府が子どもの教育にお金をかけていないのだ。(中略)日本の場合、私的負担が公的投資の少なさを補っているが、私的負担の割合が高くなるほど、所得格差が子どもの学力の大きく影響することになる。貧困から子どもを救うには、公的支出を増やすべきなのだ。

・子どもの教育にお金をかければ、学力が伸び、大学への進学率も高まる。一般的に学歴が上がると就労率も高まる。就労率が高まるということは、税金によって保護される側から、税金を支払う側に人がシフトするということである。

・現状では教育への公的支出が少なく、私的負担にも限界がある。それを補えるのは、僕たちのような教育NPOだと思う。TFJは、個人や団体、企業などの多くのみなさんからの寄付で支えられている。みなさんからいただいた寄付は、政府や自治体の公的支出の不足を補い、子育て世帯の私的負担を軽くする大切なお金だ。

教育システムの問題点

その1 教員の高齢化と急激な世代交代で、経験不足の新人の増加
その2 クラスの人数が多すぎるため、理想とする教え方ができない
その3 教員の労働の長時間化
その4 ITを活用した教育の遅れ
その5 特別な事情の子どもへの対応ができる教員が不足
その6 管理者への応募者数の減少

・細かくあげればキリがないが、僕たちは主にこの6点が、現状では学校現場の問題点だと考えている。これらのことは先生が魅力的な職業だと思われていないことがベースにあると思う。

・教育問題は、学校現場に任せていては前には進まない。「学校がダメだ」「親の教育がよくない」「教育委員会がダメだ」とお互いを責めている現状でいちばんのとばっちりを受けるのは子どもたちだ。「家庭環境、経済環境にかかわらず、すべての子どもたちの可能性を活かし、成長できる社会を」。僕たちはそんな社会の実現を本気で目指している。

 

夢を持つことから、すべてが始まる

・先が見えない時代だから夢を追うのはリスクが高いという意見もあるだろう。しかし僕は不確実な時代ほど、リスクを取らないことが最大のリスクになると思っている。安定志向で無難な選択ばかりしていると、いざリスクが表面化したときに対応することが難しくなる。リスクに上手に対応できるのは、実際にリスクをとって、それに対応する訓練を積んできた人だ。

試し食いのすすめ

・「本当に何をやりたいのか、自分でもよくわからないんです」僕が夢を持つことの大切さを説くと、学生からこのように訴えられることがある。確かに自分の人生を懸けてもいいと思える夢はそう簡単に見つからないだろう。だからこそ悩める人は受け身で待つのではなく、自ら探しにいく必要がある。公道無くして、進むべき道は見つからない。

・もちろん試し食いをしたからといって、必ず夢が見つかる保証はない。ただ、メニューの前で考え込むより、夢が見つかる可能性はずっと高いはずだ。

・僕は夢を見つけるために進路を変えるだけではなく、見つけた夢を途中で変えてもいいと思っている。僕自身、夢の形や大きさは変わっている。

・新たな経験をすることによって人は成長をする。その中でやりたいことが職業と一致するものがきっとでてくる。それが自分にとっての天職だ。それは今は形になっていない職業かも知れないし、最初にイメージしていたものとは違う仕事かもしれない。

社会は変わるものではなく、自分で変えるもの

・教育格差をはじめ、この社会にはさまざまな問題が山積している。それらの問題を他人事として捉えているかぎり、問題は解決していかないだろう。一人ひとりが自分の問題としてとらえて押すから、重たい車が少しずつ前に進むのだ。

グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」より)

 

Teach For Japanはこのように、Next Teacher Program という少なくとも2年間にわたって正規の職員として学校現場に派遣し、学校現場の課題解決を推進するプログラムを行っています。

教師という職業を本書で何度も出てきているように、本来めちゃくちゃやりがいがある職業のはずなのに、様々な要因が積み重なってむしろ大変で、ブルーカラーな職業というイメージがついてしまっています。

 

たくさんの複雑な問題が重なり合って、日本の教育に関わる課題というのは、とても複雑で解決することがとても難しいですが、TFJのような素晴らしい団体が活躍することで、少しずつ変わっていくのだと思います。

 

教師になりたいと考えている方は、ぜひフェローに申込をしてみて下さい!

フェロー(教師)に応募する | Teach For Japan

また教育にTFJについてもっと知りたいという人は、色々なイベントを開催しているので、ぜひ参加してみて下さい。

NTP説明会の記事一覧 | Teach For Japan

そして本書でも何度か出ているように、寄付受けつけています。古本での寄付、マンスリーの寄付、プロボノとして関わるなど、様々な支援の方法があります。

寄付・支援の方法 | Teach For Japan

 

 

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