NPOで働きたい人必読書! 「NPOで働く 『社会の課題』を解決する仕事」

 - 

 -  >

 -  NPO, キャリアデザイン, 書評

ニートなどの働けない若者の経済的自立の支援を行っている育て上げネット理事長の工藤啓さんNPOで働くの書評記事です。

工藤さんが育て上げネットを立ち上げた経緯、育て上げネットで実際に働いている人について、というようにNPOで働くということを非常にリアルに書かれています。

 

NPOで働きたいと考えている人、NPOに関わりたいと考えている人必見の本です。

 

・本書を執筆した理由は、会社や学校、家庭で日々奮闘している若いひとから年配のひとまで広く、「NPOで働く」ことを選択肢のひとつとして考えてもらいたいためだ。NPO(特定非営利活動)法人という法人格が生まれて十数年、NPOで働くひとは確実に増えてきている。一方、一般にはまだまだNPOはボランティアであって、就職先、働き先としては認識されていない。そんなひとたちに「案外そうでもないですよ」「時代も社会も変化していますよ」ということを伝えたい。

・最近では事業型NPOとして、社会課題の解決と収益の確保を同時並行で成し遂げているNPOもたくさん出てきている。当然、そこには仕事としてのNPOがあり、NPOで働くことで生計を立てている社員がいる。

 

僕がNPOを立ち上げた理由

・アルバイトに精を出す幽霊学生に転機が訪れたのは夏休みにアメリカ旅行に出かけたときだった。旅行中に出会った台湾人留学生グループと1カ月を過ごした僕は、「大学をやめてアメリカに行かなければならない」と強く決意させられるほどの衝撃を受けた。

・ハンマーで頭を殴られた気がした。ほぼ同じ年齢の人間が外交問題を肌で感じ、緊迫感を持って生きている。振り返って自分と言えば、ろくに大学にも行かずにアルバイト三昧。人生どころか数年先の将来すら考えることもない。彼らと一緒にいたいと思った。いや、彼らと一緒にいること以外の選択肢はなかった。

勉強するより起業しろ

・世界各国から留学してくるクラスメートとの議論はいつも新鮮だった。将来の話をしても、目的を就職に置く友人はいなかった。それぞれが最終的には母国にどう貢献できるかを語り、数年後には起業することを前提にキャリアビジョンを描いていた。どこの会社で数年働き、その後はどこの会社に転職をして起業する。それが彼らのキャリアプランだった。  夢と希望と現実が入り混じった語らいは刺激的で「こういう物を製造したらきっと売れる」と誰かが言えば、「いや、売れるかもしれないが数年で競合他社が現れる」。そんな話ばかりしていた。環境がひとに与える影響は大きく、僕もぼんやりながら自分の生き方、将来について真剣に考えるようになっていた。

・2000年前後、日本では大規模な金融制度改革「金融ビッグバン」による金融業界の規制緩和が取り沙汰され、デフレ不況の影響から数十万から数百万人が仕事を失うのではないかと言われていたらしい。「らしい」というのは、僕自身はあまり日本の状況に関心がなく、もっぱら目の前の膨大な宿題をこなすことで精いっぱいだったからだ。  そんな折、ヨーロッパから留学してきた友人が僕に声をかけてきた。「日本は規制緩和などでこれから中高年が大量に仕事を失うそうじゃないか。この手の話は先進国ではよくあることだ。いまがまさにチャンスだ!」と。なぜ中高年層がリストラに遭うような状況がチャンスなのか。その意味をわかりかねていると、彼は続けて「政府はおそらくリストラされた中高年の雇用対策に乗り出すだろう。一部の企業はそちら側にビジネスの匂いを感じて動くだろう。そのときに放置されるのは若い世代だ。きっと3~4年もすれば放置や排除された若い世代の問題が雇用問題を超えて社会に顕在化する。つまり、無業の若者へのサポートというマーケットができるぞ」と興奮気味に言った。リストラなどで困っている状況下だからこそ次の新しいマーケットができるところを狙え、という突然の話にはびっくりしたが、何か心の奥底がムズムズした。

・10代前半から20代くらいで、社会的な行き場がないひとたちとの共同生活。そういう環境で僕は育った。だからこそ、彼の話は遠い異国の話でありながらどこか身近だったのかもしれない。  そんな僕の生い立ちを話したところ、同じく議論に参加していたクラスメートは「いまここで勉強なんかしている場合じゃない。チャンスのあるうちに日本に帰って起業すべきだ。勉強なんかあとになってもできるじゃないか」と僕を説得し始めた。そして「もしうまくいかなかったらまた戻ってくればいいだけだ」と。あまりにも楽観的に言われたが、よくよく考えれば学校と社会(労働市場)の流動性が高い国では当たり前の考え方なのだろう。働くのも学ぶのも年齢でわけるのではなく、必要性に応じて選べばいい。確かにそうだよな、と思った。

若者支援は社会投資

・起業をするといっても会社を起こしたこともなければ、アルバイトしかしたことがない。創業のために何から手をつければいいのかもわからない。そこで、若者を支援することがマーケット化しているヨーロッパを見に行くことにした。

・英国政府とパートナーシップを結び若者支援胃取り組む施設長に、僕は効いてみる。「投資と社会投資の違いは何ですか?」と。すると施設長はていねいにその違いを説明してくれた。「投資は資本を市場に投入すること。成功すれば大きな利益をあなたにもたらすだろう。社会投資は君の志や時間、アイディアなどを社会のために投入することだ。そのリターンは社会がよくなること。自分のお財布から100円を投資して1000円になって戻ってくるのと違い、投資した時間や活動によって何か社会によい変化が起こることがリターンなんだ」

・自己責任や根性、やる気という言葉をもって若者を見捨てる社会は、巡り巡ってそのツケを自らが負担することになる。逆に、支援サービスによって若者が社会に参加するようになれば、やがて経済的自立をもって納税者として社会を支える側になる。もし、僕自身の人生をそこに〝社会投資〟すれば日本の社会はもっとよくなる。単純かもしれないが僕はそう考えた。そして、起業することの意味を社会投資に見出すこととなった。

法人格はNPO

・事業構想を練るうちに、事業を通じて直接若者を支援する以外にも何か社会に貢献ができるのではないか、価値の創造に寄与できるのではないか、とも考えるようになった。たとえば、政策立案はどうか。

・政策立案過程について関心を持ったかといえば、英国視察中に訪れた、国が作り民間団体が運営する職業紹介機関(日本でいうと若者向けのハローワーク)のキャリアカウンセラーの言葉がきっかけだった。「優れた政策が生み出される際に重要なことは、メンバーにその政策によって影響を受ける当事者またはそれに近い人間が3割程度いることです」。

・政策立案にかかわって社会に貢献するのだと叫んでみても声だけが空しく響くだけで終わりそうだ。そんなときいくつかの審議会や委員会のメンバーにNPO法人理事長の肩書きで参画している方がいることに目がとまった。  法人設立の届け出が受理されれば理事長となり、組織の代表ということになる。実績もなければ、どうしたら政府の審議会や委員会のメンバーに選ばれるのかはわからないけれど、少なくともその一員になれる可能性は出てくる。そのための手段としてNPO法人という法人格は突如開けた可能性であったのだ。

NPOはボランティアではない

・そもそもNPOとは営利を目的としない民間組織のことである。だが、この〝営利を目的としない〟という表現が誤解を生むのだろう。別に「利益を得てはいけない」と言っているわけではない。完全ボランティアのNPOもあるが、利益は組織が存続するためのガソリン(原資)であることを認識し、その原資をテコにさまざまな社会課題の解決のために事業性を持って取り組むNPOもたくさんある。

・株式会社と何が違うのかと聞かれることもあるが、僕は利益を株主に分配するのではなく、課題解決のための事業拡大や新規事業への投資に使うことだと答えている。もちろん、同じように事業拡大や新規事業への投資に使う株式会社もたくさんあるが、NPOは株主を持たない。ゆえに、利益を株主に分配するか、新しい事業に投資するのかを選択するのではなく、課題解決に投じることをそもそもの目的としている。

若者にサービスを提供する事業型NPO

・育て上げネットは事業型NPOとして立ち上がった。受益者負担による自主事業や行政からの委託事業、企業とのタイアップ事業などで収支を得、利益は若者支援事業の拡充や新しい事業に投資していく。僕の経営手腕の稚拙さにより常に利益を出せているわけではなく、利益がほとんどない年度や、赤字に陥る年度もある。もっともっと経営者としての成長が必要だ。

・育て上げネットの給与支給額は経験年数や役職によって異なるが、平均年収ベースで300万から350万円程度。賃金テーブルがあり、直接支援に携わる社員、いわゆる中間管理職、上級管理職で給与体系が決まっている。給料は支払っているけれど、一般企業と比較するとまだまだ胸を張れる金額でないのが残念だ。胸を張れる金額にもっていくのが経営者である僕の大切な仕事であり、その意味から十分な仕事ができているとはいいがたい。もっと努力しなければならない。

・社会保険は一通りそろえており、その他住宅手当や家族手当などもある。まだ導入できていない各種諸手当や福利厚生の拡充は大きな経営目標のひとつだ。 最初に述べたように産休や育休の制度はある。制度を活用する機会のある社員はまだ多くいるわけではないが、活用した第一号の女性社員が職場復帰したし、男性社員一号(厳密には社員ではないが)は僕になる予定だ。社員には育休などの制度をどんどん活用してほしいと思っている。

 

若者支援の現場を作る

・NPO法人となったのを機に事務所を構えようと、自分なりの立地イメージを固めた。まず交通アクセスがいいこと。(中略)次に若者が就職活動をするにあたって雇用形態にかかわらずそれなりの求人数があること。(中略)最後に若者が社会経験を積むための”機会の多様性”があること。立川はそれらを満たす立地だった。

・不動産会社も物件オーナーもNPO法人なんていう法人格など知らないものだから、「これって会社……ですか?」と怪しげな目で見られる。入居者募集の看板がかかっている物件なのに、なんだかんだと理由を付け部屋を見せてすらもらえなかったのはかなり堪えた。NPOじゃ事務所すら借りられないじゃないか、と。

・救世主は立川市役所の人たちだった。商店街の役員を兼務するビルのオーナーのところに同行してくださり、胡散臭く思われるNPO法人でも、普通の会社と同じように事業を行うものであることをていねいに説明してくれた。

・大手金融機関からの融資は難しいと判断し、地域経済に血液を注入し続ける信用金庫にアタックしてみる。かなりあっさりと断られたところもあったが、一社だけわざわざ事務所に足を運び、僕の話を懇切ていねいに聞いてくれたのは多摩地域を支える信用金庫の担当者だった。

窓を拭かせてください

・最初に企画したのが〝窓拭きをさせていただく〟事業。僕らは雑巾とバケツを持ち、商店街を一軒一軒回る。そして社長さんにこうお願いをする。「すみません。窓を拭かせていただけないでしょうか。もちろん無料です。僕らは若者を支援するNPOでして、〝やること〟を探しています。どうぞ窓拭きをさせてください」と。

・僕らは若者に地域との接点をもってもらい、誰かの役に立つ機会、仕事に通じる経験をしてもらいたいと無料の〝窓拭きをさせていただく〟事業を考えたわけだが甘かった。無料ということへの不審もあるが、値段設定はともかくサービスには対価があり、物事には相場がある。そういうことにすら考えが及ばず、無料なのだから協力してくださいというのはボランティアの押し売りのようなものだった。そこであれこれ思案して価格を決め、再び店主に話をしてみた。

ゴミを拾い続けて

・若者の活動の場を開拓するのは予想外に難しいことがわかり、何かよい手はないものかと考える日々。ただ、支援を受けるために通ってくる若者に「何も機会を提供することができません」と言うわけにもいかない。  次に僕は軍手にトング、ゴミ袋を持ってゴミを拾うことにした。何かの突破口になる見込みや、支援メニューにつながる戦略もない。平日の昼間から何もせずにウロウロしていたらおかしいけれど、ゴミを拾っていれば怪しまれたり、叱られたりすることはないだろうと考えた。微力ながら街も少しはきれいになるはず、と思い付きの行動だった。

・ここから僕らは徐々に地域とのつながりを深め、若者への支援サービスは広がりを持って行く。ようやく事業化のスタートラインに立ったのだ。

働き続けるための支援

・社会参加すらままならない若者を想定していたが、どうもニーズがあるのはそこだけではないらしい。彼らからの相談でも最終目的は仕事に就くことなのだが、働いた経験があるものにとっては仕事に就くことへの悩み以上に、就職後、〝働き続ける〟ことができるかどうかが不安でたまらないというのだ。

・僕らは既存サービスでは解決できないところに解決手法を持って事業展開していくべきだし、そうでなければ存在価値はない。埋もれたニーズ、誰も気が付いていない社会課題に挑戦していくのが使命だ。

・雇用・労働分野に関しても就職のためのサービスは官民問わずあるが、〝働き続ける〟ための支援サービスは見当たらない。この部分で僕らは価値を創出できるのではないだろうかと考えた。

・仕事に限らず、社会参加──社会の一員として家族や親族、友人や仲間とのコミュニティ──も同じように断続的ではなく、持続的であるためにいま必要な支援サービスを提供していく。僕らの最初の社会投資事業の価値は〝持続的な〟社会参加と経済的自立に決まった。

身体づくり、耐性づくり

・ジョブトレの具体的なサービスとは何か。それは働くための「身体づくり」と働き続けるための「耐性づくり」に収斂される。

・ここでいう「身体づくり」とは、朝起きて職場に向かい、自宅に帰って夜寝るまでの生活リズムを整えること。そして週五日間仕事をこなすための体力をつけることだ。

・長期にわたり対人関係を持てないでいると、他者と長くいることに過度のストレスを感じるようになる。満員電車のような人混みでは〝人酔い〟してしまい気分が悪くなる。また、生理的、感情的に合わない人間と同じ空間にいると必要以上にそれを意識してしまいイライラしたり、極端に疲れる。そのような状況でもある程度やっていけるよう「耐性づくり」もまた「身体づくり」と同様に重要になる。

・これらによって就労後も自らの生活リズムを乱すことなく、〝それなりに〟気の合わない仲間とも仕事をやっていけるという自信を持ってもらうことを特に大きな目的としているプログラムなのである。

ジョブトレの支援者に求められる要件

・僕は多くの場合、若者を社会に送り出す支援をするのだから、若者に「自分も社会に出ていける」と自信を持ってもらうためにもできるだけ多様な人間と関わることができて、さまざまな機会を提供できる環境づくりが大切だと伝えている。そのうえで有資格者もいればなおよしだ。

・出来る限り彼らの不安を軽減したい。できれば解消したい。「社会っていろいろなひとがいてシンドイこともあるけど、それなりに楽しいな」と思って生きてほしい。そのためには社会に出る準備でもあるジョブトレは、〝社会慣れ〟できる環境でもありたいと考えている。若者たちがいろいろなひとに出会い、かかわれる場所として。

・若者が社会とつながっていくことを目的に支援をするにあたっての人材の要件は、資質やスキル、技術や経験も大切だが、それよりも常に社会に興味関心を失わず、とにかくやってみる好奇心があるひとが適任だ。理論や方法論の勉強のみならず、いまの流行りに乗ってみる行動力や、自分の趣味の領域を広げていくことが楽しくて仕方のない〝ひと好き〟であれば、若者に安心感をもたらし、信頼を獲得することができる。

 

育て上げネットで働くひとたち

月給5万円の事務局長ー石山義典(学習塾経営者からNPOへ)

・石山は僕より12歳年上で、大学時代に地元で始めた学習塾が軌道に乗り、昼間の空き教室を利用して英会話スクールや、学校に通うことのできない不登校児童のためのフリースクール開講へと事業を拡大していた。不登校児童の居場所を提供する事業を通じたつながりから、ほとんどボランティアで社団法人の運営にもかかわるようになったそうだ。石山と出会ったときには、彼が育て上げネットで最初の社員になるとは夢にも思わなかった。

・バックオフィスを整備でき、対外的なコミュニケーションをきっちり取れる仲間の確保が急務だと考えた。すぐに思い浮かんだのが石山だった。僕の知る限り、これ以上の適任はいないだろう。断られる可能性は大だがまずは話だけでもしてみようと諸々の条件をまとめてみた。

・石山との話し合いの詳細はあまりよく覚えていない。自分ですら受けないようなオファーなのだから、ほとんどあきらめていたのだろう。ただひとつだけ鮮明に覚えているのは「いまは月5万円しか払うことができません。でも、将来的にはちゃんとした給料が払えるようにします」という言葉は本心からだったということだ。「ねるとん紅鯨団」というとんねるず伝説の番組で、意中の女性の前で手を差し伸べ「(お付き合いを)お願いします」と申し出て返事を待つ男性の気持ちがわかった。視聴者がいたとしたら、間違いなく「これは無理でしょー」と思ったはずだ。  しかし、当時30代半ばに差し掛かった年齢で、妻と二人の子どもを抱える石山は快く引き受けてくれた。

・とかく代表が注目されやすいNPO法人において事務局長が担うのは地味で地道な業務が多い。総務、法務、労務、人事と小さな組織が組織として成立するためにはこれらの業務をひとりで担わなければならない。また、ひとつのミスが致命傷をもたらす可能性があるという意味からも、負荷は高く責任が重い。

ドラえもんみたいだねー山本賢司(NPOからNPOへ)

・2001年に若者支援のためのNPOを立ち上げようと決意してから、実際に2004年5月に法人化するまで約3年の月日を費やした。思いの外時間がかかったのは、現場で若者と向き合える即戦力となる支援者の不在も影響していた。

・山本は、大学1年のときから不登校児童などへの支援活動に参加している支援者だった。

・月給7万円でフルタイムの勤務。一人暮らしでは到底食べていける金額ではないが、ない袖は振れず、いまはこれが精一杯であることを伝えた。すると「貯金があるのでしばらくは大丈夫です。底をつく前に最低限生活できるまでの給料をもらえるようがんばります」という言葉に、僕は泣きそうになったが、「この金額、ウチではかなり高いほうだから。自分の給料を自分で稼ぐ気持ちでやってくれないと困るよ。期待しているから」と言葉をかけた。本格的な支援サービスを若者に提供できる目途がついた。勝負の1年が来た。

・小さなNPOでずっと活動してきた山本は、ベンチャー企業で立ち上げから社員として奮闘してきた人間と似ている。小規模であるがゆえにひとりで抱える業務領域は広く、外注できないため一から調べて自分たちで創り上げていく能力と情熱に溢れていた。

・あるとき同業のNPOで働く友人が僕にこんなことを言った。「育て上げネットの山本さんってドラえもんみたいだよね。そしてお前はのび太くん。何か困ったことがあると、ドラえもんに頼る。そして、ドラえもんがいるとわかっているから無理っぽいことでもとりあえず引き受ける」。ただ、のび太くんはいつかドラえもんの存在から自立しなければならない。ドラえもんはずっとのび太くんと人生を共にするわけではないが、山本はここにいる。  のび太として僕は何をしなければならないのか。それはすべての負担を山本のような一人のスーパーマンに押しつけるのではなく、多くの仲間と共にチームとなって仕事ができる環境を作ることだ。それにしても、僕がのび太くんで、山本がドラえもんとはうまいこと言うものだ。

雇えないかな、僕をー井村良英(財団法人からNPOへ)

・井村の参加で、僕は改めて社会的な組織経営にとって大切なテーマを心に刻んだ。支援サービスの質を上げるためだけに専門知識や経験年数のある人材を採用するのではなく、若者の自立支援を通じて目指す社会に向かってまい進していくことに、情熱と揺るがない意志を持つ仲間を集める。そういう共同体であり続けなければ、社会課題の解決の先へはたどり着けないのだろうと。

・遅々として進まない地域との関係作りを一気に前進させたのが井村だった。

・地域の方のなかには僕の顔を見たことがないひともたくさんいる。この立川という地域において、育て上げネットとは「井村さんがいるところ」という認識なのだ。本当に凄い人間だと改めて思う。

・この地でNPO法人を立ち上げて約7年。井村が転職して来てから4年。いまは僕らも地域の一員として地域に頼られ、地域に貢献している実感がある。地域がなければ若者は成長しない。そして、若者がいなければ地域は活性化しない。地域と若者のつなぎ役が僕らの役割であり、その中心には井村がいる。

ちゃんと仕組みを考えましょうー深谷友美子(大手旅行会社からNPOへ)

・深谷の存在は、育て上げネットの「魂」に「組織」という枠組みをもたらしてくれた。まずドラスティックに変わったのは企業とのプロジェクトの進め方。これまで不格好なレンガのように積み重なっていた業務を整理し、タイムラインを引き、マイルストンを置いていく。ゴール達成のために、いつまでにどの業務をこなしていくのか。常に追い立てられているような仕事の仕方が、順序立っていく。

・もうひとつ大きな変化は人材育成の面だ。若い世代のパワーだけで前進してきた育て上げネットには人材マネジメントのノウハウがない。年々増える社員と事業所。同世代だけでの支援活動に年齢が上の世代や専門性を有する人材が入り込んでくる。個々人がバラバラに動かないように、どれだけチームとしてまとまることができるかが成果への鍵なのだが、これまで現場で若者に伴走し続けた社員が、いきなり数名の部下を使う状況に戸惑い、マネジメントができず壁に当たる。  経理報告、クレーム処理、連携企業との連絡、行政への折衝。全部自分でやろうとすれば潰れてしまう。リーダーとして業務を整理し、適切な人間に業務を割り振る。小さな認識のズレを見逃さないよう細心の注意を払いながら、円滑に業務をこなしていく。経験が蓄積されていない僕らはそれらを手さぐりでやっていたが、スポーツ選手が過酷なトレーニングで疲労骨折を患うように、知らない間に組織は疲弊していた。

・深谷は「ちゃんと仕組みを考えましょう」と笑顔で提案した。まずはマネジメントの役職者がやるべき業務を整理する。そのうえで役職者がやらなければならないことと、他の社員に任せ、事後確認だけすればいいものにわけていく。書類も減らし、効率化できる部分はザクザクIT化していく。

相容れない二つの世界ー高崎大介(人材ビジネスからNPOへ)

・高崎はフリーのSEとして活動後、大手人材ビジネス企業で営業職を務めた経歴を持つ。行政との仕事も経験し、僕が出会ったときには人材ビジネスベンチャーの取締役だった。人懐っこい性格と人材ビジネスでの経験。SEとしての技術。ベンチャーNPOとしては是が非でも一緒に働きたいジェネラリスト。

・高崎が抱えるスタッフは、半分が企業出身者、もう半分が福祉分野で活躍した経験のある支援者だった。成果は数字で示すことを求められてきた高崎は、国民や市民の税金を使って支援をしているのだから、納税者に説明できる数値実績の提示が不可欠だと考えた。  しかし、高崎は壁にぶつかる。福祉分野から来た社員のなかには、数値化や専門性を活かした分業体制にアレルギー反応を起こすものもいる。目の前の困難を抱える一人の若者にすべての時間と資源を投入し、何年かかってでも〝私が何とかする〟という熱い想いを持って業務に励むものも少なくない。そんな彼らを前にして、高崎は迷う。

・成果の見えやすい数字の増減に一喜一憂していた世界から、一人の若者にどこまでもかかわることに喜びを感じる世界まで。一見、相容れない二つの世界をうまく融合させることができれば、より多くの若者を、そして、より大きな困難を抱える若者を救うことができるはず。

僕もわからないからインターンからでー岩田博次(定年退職後、NPOへ)

・育て上げネットで活躍している社員の年代は幅広い。定年してもなお社会に貢献しようと高い志を持って若者とかかわるシニアもいる。2009年8月から活動に参加している岩田博次はその代表ともいうべき存在だ。

・きっと岩田と同じようなシニアは何十万人といて、何か社会に貢献したくてウズウズしているのではないだろうか。企業経験はNPO活動一本でやってきた人間にとっては知恵の宝庫。ぜひ、その力を借りたいと願うのは僕だけではないだろう。

・この項の最後に、岩田が僕にくれたメモを紹介したい。  自分の世界の広がりと価値観の変化に驚いています。まさにアクティブセカンドライフ! この世の中では本当にいろいろな活動が行われている。方向を決める出来事が次々とタイミングよく発生してきた。まさにラッキーなこともあったが、自分が努力し探した結果見つけ出しているともいえる。まさに「プランドハプンスタンス(計画された偶然性理論)!」でもこれからもまだまだ発展する気もします。「行動することにより動く/開かれる」  信条「誠心誠意」「やってみよう」「継続は力」

NPOってどこからお金をもらうの?ー川田朋美(新卒でNPOへ)

・僕はNPOとして新卒採用市場に挑戦してみたかった。  新卒採用にこだわったのは、在学中からNPO活動に参加したり、休学して1年間フルコミットするような学生ではなくても、就職先の選択肢にNPOという「働き方」があるような社会づくりにいくばくか寄与できるのではないかと考えたからだ。

・川田は、教育社会学や臨床心理学を大学で学びながら、一方で忙しい学生生活の合間を縫って子どもへの美術教育を支援するボランティア活動にも積極的にかかわってきた。そんな彼女にとっては、若者への支援活動など具体的な内容はわからないが、育て上げネットが目指す社会がどのようなものなのか何となくピンとくるものがあったようだ。

・誰よりも若い社員である川田が入社してきたことで社内によい空気が循環する。川田に対して、それぞれの社員が担当する業務が組織全体のどの部分に貢献しているのかを説明するためには、いまいちど自らの仕事を棚卸し、言語化しなければならない。  また、新卒社員である川田が努力をしているのを間近で見ていれば、他の社員も最後のひと頑張り、最後のひと工夫を怠らない。余裕があるときには手を貸す。そういった行動がいつの間にか組織全体に広がっているように思える。

 

育て上げネットを支えてくれる企業のひとびと

・育て上げネットは、さまざまな企業と協働事業を行っている。自分たちだけでできることには限界があり、「自分たちにできないことは他人の力を借りる」という当たり前の発想から、単なる形式にとどまらないネットワークづくりを進めている。一方、協働事業は、CSR(企業の社会的責任)を意識し、実践につなげていこうとする企業と共に、社会課題をチームとなって解決していく大きな手段でもある。

寄付者への感謝が足りないーNPO法人チャリティ・プラットフォーム

・株式会社ではなく、NPOだからこそ大切にしていきたいのが「寄付」である。株式会社は市場から資金を調達できるが、NPOはそれができない。代わりに寄付というかたちで市民から資金を調達することができるのはNPOの強みではないだろうか。

・寄付文化の創造を掲げるNPO法人チャリティ・プラットフォームの佐藤大吾代表理事との出会いにある。初めて話をしたときから、佐藤代表はあきらめの境地で寄付集めに消極的な僕に優しく喝を入れてくれた。  「NPOの仕事は問題の解決。薄く、広く、継続的に共感を集めることなんだよ。世の中に問題があるからNPOは生まれた。すべてのNPOは『社会問題』に取り組んでいる。問題がなくなればNPOも不要。

・「さまざまなサポート機関との連携はもちろんのこと、いま現在、ひきこもりやニートの支援の大切さを知らなかったり、関心がなかったりする一人ひとりの市民を巻き込み、大きな社会行動のうねりを作りださなければ社会課題は解決しない。その〝巻込み〟の結果として、育て上げネットの活動に寄付をしてくれることもあれば、実際に支援サービスの一端をボランティアとして担ってくれることもある」

・「日本のNPOの多くは、寄付が集まらない、寄付が継続しないというけれど、それは寄付者への感謝が足りないから。NPOには支援対象である第一顧客と応援者としての第二顧客がいる。NPOは寄付者への感謝が足りない。彼らへの感謝、気づかい、配慮などをもっとしっかりしていけば大きな力になるし継続するよ」

・僕らは、寄付はお金だけではないこと。そして、お金を寄付するのは気後れするが物品であれば逆に協力しやすいひともいることがわかった。

書棚で眠る古本が寄付になるーバリューブックス

キフボン・プロジェクトは、なかなか寄付をくださいと言えない僕にとって勇気と自信を与えてくれた。ブログやツイッター(Twitter)、フェイスブック(Facebook)などで情報を広げつつ、営業や講演の場でお願いをする。「書棚に眠る古本が寄付になります。ご自宅や社内に書籍で不要なものがありましたら、ぜひ、キフボン・プロジェクトをご活用いただけませんか」といった具合だ。

・キフボン・プロジェクトは、僕らがずっとやりたいと思っていたが資金という壁に阻まれ実施できなかった事業を次々と実現させてくれる。受益者である学生や若者には、今回の事業の実現には多くの方々からの寄付によるものであることをしっかりと伝え、僕らもまた寄付者への感謝の気持ちを忘れずに事業を行っている。これまで若者支援を通じて若者をこの社会で活かしていきたいと思い活動してきたが、僕たちもまた寄付者に活かされていることを実感している。

 

ポットのお湯足し24万2500円ー日本IBM

・僕が考える経費節約というのは会社から現金を出さない、出すにしてもなるべく少額に抑えるというわかりやすいコスト削減案だけ。しかし、コスト削減は決してそれだけではない。それを教えてくれたのが日本IBM社の「IBM プロボノ プログラム」だった。

・分析結果を受け、どの業務を改善していけばインパクトが大きいのかを議論し、実際に改善方法を見つけテスト導入していく。ある部分はITの活用によって効率化が可能となり、ある部分は無駄な業務プロセスを省略する。またある部分は積極的にパートさんを活用する。まさにプロの仕事。これを社会貢献として日本IBM社が育て上げネットや他のNPOにも価値提供してくれている。

 

NPOを通じて社会に貢献する

よりよく貢献するために

・NPOに提供できる具体的なアイディアを自身で知るためには、キャリアの棚卸しをしておくとよい。そこまで深く掘り下げて考える必要はないが、これまで自分が培ったスキルや経験が明確になると、貢献できる部分がより鮮明になる。鮮明になれば相手にもよく伝わり、実際にNPOにかかわることになったときのミスマッチが起こりにくい。少々面倒だけれどやってみて損はないはずだ。

・物理的な時間を提供してくれるひと以外にも貢献の方法はある。自分は何か具体的に提供できるものはないのだけれど、知り合いだけはたくさんいるからと、次から次へと若者支援分野に興味のある起業家や企業人を紹介してくれるひと。一緒に寄付を集めてくれる友人。ジェンガのように不安定に積み重なった事業を一つひとつ整理してくれるコンサルタント。NPO活動がより多くのひとたちに理解してもらえるようキャッチコピーを考えてくれる言葉の専門家もいる。

・NPOを通じて社会によりよく貢献するためには、具体的に提供できるリソースや諸条件を最初にしっかり共有しておくことでミスマッチを防ぎ、より効率的、効果的に社会課題の解決に取り組むことができる。ぜひ、NPOに連絡をする前にキャリアの棚卸しと諸条件の整備をしてみてほしい。

ボランティアでかかわる

・僕はボランティアスタッフの重要性を「社会(外部)の風」と捉えている。いつも同じ仲間で社会課題にあたっていると、思考が似通りアイディアが固定化しやすい。ひとつのアイディアに社員がこぞって賛同してしまいがちなところへ、「もっと違う視点があるのではないか」「私は別の考えを持っています」と新鮮な風を入れ込んでもらえることで、新しいアイディアが生まれたり、アイディアをより洗練することができたりする。普段、共に活動していないひとだからこそ見える世界観をもたらす存在がボランティアスタッフの価値なのだ。

プロボノで関わる

・ビジネスパーソンが日常の業務で当たり前に行っていることがNPOにとってはのどから手が出るほど貴重なリソースなのだ。自分たちだけではどうしてよいのか途方に暮れているとき、プロボノであるあなたの一言が、NPOの抱えている課題を解決に導く。時には気づいてすらいない問題の発見につながる。それによりNPO活動はより一層スピード感を持って広がっていく。あなたの一言がギアをあげる。

・あなたが気になっている社会課題に取り組んでいるNPOがあれば、ぜひプロボノとしてのかかわりを提案してみてはいかがだろうか。あなたが出す一通のメール、ちょっとした助言が、その解決に向けて努力しているNPOを助けることができる。それはNPOにとっても、社会にとってもきっと大きな貢献につながっていく。

ファンドレイザーで関わる

・一緒に街頭募金に立ったり、募金箱の設置をお願いに回ったり、友人や知人に活動内容を説明して寄付を募ってみたりとやれることはたくさんある。個人がやれることのなかでも特にユニークな仕組みを提供しているのが一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパンだ。インターネット上に誰もが簡単にNPOへの寄付を募る特設サイトを作ることができる。自分自身が応援するNPOを選択し、サイトを立ち上げる。

・育て上げネットのためにもファンドレイザーとして活躍してくれるひとがいる。きっと僕らの活動に意義や価値を感じてくれ、応援してくれているのだと目頭が熱くなる。金額ではなく、気持ちと行動がとにかくうれしい。もしあなたが共感する活動をしているNPOを応援したいということならば、ぜひ、ファンドレイザーになってみてはいかがだろうか。

 

おわりに

NPOを職業選択のひとつに

・僕は「選択肢の多様性」を社会の豊かさを示すものと考えている。仕事に限ったことではないけれど、「働く」を考えるとき、企業への就職や公務員になることしか選択肢がない社会というのは必ずしも豊かな社会とは思えないのだ。もちろん、昔から個人事業主として独立したり、自ら起業の道を選ぶひともいる。僕の周りにはそういう行動を起こす友人や知人が少なくないのだが、一般的に見るとかなり特別なことのようだ。  日本社会では「働く」選択肢にNPOが〝よくあること〟として認識されているとはいいがたい。本書でも何度か書いたように、まだまだ「NPO=ボランティア」であり、就職や転職先にNPOを挙げるひとの数はとても少ない。

NPOで働くより)

 

 

このようにNPO法人育て上げネット工藤啓さんが立ち上げるまでの経緯、そして若者支援のNPOとしてどのようなことをしているのか、実際にどんな人がどんな経緯で働いているのかというストーリーもあって非常に面白い一冊です。

NPOで働くというのは、この本が出版されたのが2011年ですが、少しずつ一般的になってきていることです。

新卒の求人を出しているNPOも少しずつ出てきていますし、広く求人を出すNPOが少しづつ出てきています。

 

最後にNPOの求人を探すことができるサイトを紹介します。(最後のNPOキャリアカレッジは求人ではなく、約半年のNPOで働きたい人向けのプログラムで、半期ごとの募集をしているので、現在は募集していません。)

DRIVE | ソーシャル・NPO・ベンチャー 求人情報
NPO・NGOキャリア情報ポータルサイト
ソーシャル・リクルーティング・Wantedly生きるように働く人の仕事探し「日本仕事百貨」
NPO採用情報(Facebookグループ)
NPOキャリアカレッジ

 

関連記事はこちら。

NPOの「リアル」〜”就職先としてのNPO”を考える (1/3)
「新卒としてNPOではたらくまで」NPOサポートセンター笠原孝弘さんインタビュー | DRIVE – ソーシャル・NPO・ベンチャー 求人情報
NPOサポートセンター・笠原孝弘 「NPOで働きたいという純粋な思いを実現させたい」  | EPOCH MAKERS 2020 | 現代ビジネス [講談社]
「NPOで働く」3つのメリット : まだ東京で消耗してるの?

 

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

はてなブックマークに追加

 更新をチェックする! follow us in feedly

カスタム検索

Popular Post

Copyright© 新卒フリーランサーのブログ!2014 All Rights Reserved.