ネット時代ののメディアの教科書 「5年後メディアは稼げるか MONETIZE OR DIE」

 - 

 -  >

 -  メディア, 書評

東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイトの編集長で、編集長に就任してからPVを十倍に伸ばすことに成功している佐々木紀彦さん5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?の書評記事です。

色々なメディア関係者がかなり推している本だったので、速く読んでおきたいなとずっと思っていて、読んでみたところ大当たりでした!

メディアがこれからウェブを通じてどうなっていくか、メディアのウェブ化が進んでいるアメリカで何が起きているのかを知ることができ、今後メディア業界で求められるようになる人材像まで知ることが出来ます。

 

メディア新世界で起きる7つの大変化

これから5年の間に、紙を中心とする「メディア旧世界」から、デジタルを中心とする「メディア新世界」へのシフトが一気に進み、メディア業界の”常識”が変わります。

①紙が主役→デジタルが主役

「紙を中心にすえ、デジタルをオマケに取組む」」という今の姿から、「デジタルを起点にして、紙、広告、イベントなどの戦略を考える」という姿へと急速にシフトしていくでしょう。

②文系人材の独壇場→理系人材も参入

メディア新世界において、競争力の決め手となるのは、コンテンツの質だけではありません。それと同じくらい重要なのは、テクノロジーとクリエイティブ、そして、PDCAを繰り返すスピードです。ユーザビリティーとデザインに優れたサイトの設計、読者の興味にあった記事や広告をマッチングする技術、日々サービスを改善する機動力などの”総合力”によって、勝負は決まるのです。こうした総合力の大本となるのがITです。

③コンテンツが王様→コンテンツとデータが王様

今後のメディア企業は、「ネット企業化」すると同時に「ビッグデータ化」していきます。読者のデータを上手く使って、購買収入や広告収入を最大かするとともに、どう新しいマネタイズ法を見つけ出していくかが最重要テーマになります。コンテンツを作るだけで終わっていた時代は完全に終わろうとしているのです。

④個人より会社→会社より個人

デジタルでは「個人のキャラ」がものいいます。主観を押さえた事実をたんたんと書いた記事よりも、個人の色がにじみ出た記事の方がよく読まれるのです。

デジタルの世界では、媒体を丸ごと読むという習慣が薄れ、読者は各媒体をつまみ食いしながら、ニュースを消化するようになります。そこで、ニュースを選ぶ基準は、「どの媒体」よりも「誰が書いたか」「どんなテーマか」です。

⑤平等主義+年功序列→競争主義+待遇はバラバラ

デジタルメディアでは個人の貢献度が見える化されます。どの記者が何本の記事を書いたか、どれくらいPVを稼いだか、どの編集者の企画がヒットしたか、読者の評価はどうだったか、そのすべてがデータで見られるようになるのです。

⑥書き手はジャーナリストのみ→読者も企業もみなが筆者

⑦編集とビジネスの分離→編集とビジネスの融合

 

ウェブメディアをやってみて痛感したこと

・東洋経済オンラインのPVが10倍に伸びた理由は、「紙の編集部と、組織、コンテンツ、ブランドを切り離したこと」「30代をターゲットにしたこと」「ユーザー第一主義を徹底したこと」の3つです。

・「ユーザー第一主義を徹底」したことの意味は、一つは「ユーザーの満足度を最優先する」ということであり、もうひとつには、「短期的な利益よりもユーザー数やPVの増加を重視する」ということです。とにかく、「読者からどう見えるか」「読者の心をどうつかむか」に焦点を当てました。

1525 img08

・ウェブの場合は、タイトルを見て「面白い、読みたい」と思ってもらえなければ、チラ読みすらしてもらえません。そのため、ウェブの編集では、タイトルを決めるのに紙の時代よりは10倍は気を遣っています。

・ウェブの原稿の上手さは、プレゼンの上手さと比例するように思います。ウェブ原稿の腕を磨くのであれば、むしろ話し言葉、弁論術から学ぶ方が近道です。

・自分が信じることであれば、逃げ道をつくらず、炎上をおそれず自分の意見を主張して欲しいということです。

・ウェブメディアとはあくまでもプラットフォームです。もちろん、あまりに質の低い記事はボツにしますが、一定のレベルにあれば論調をとわず掲載します。なぜなら、ウェブメディアにとって、大切なのは、一つの方向に読者を誘うことではなく、さまざまな意見を読者に提供し、読者の頭の中を刺激することだと思っているからです。

 

米国製メディアは稼げているか?

・過去10年間、米国メディア企業は大激震に見舞われました。インターネットの浸透による部数減、リーマンショックに伴う広告減、そして、スマホやタブレットの普及ーこれまでの常識を根底から揺さぶるような大波が、メディア業界を飲み込んだのです。こうした構造変化に対応すべく、米メディア企業各社は、すさまじい量の血を流しました。

・米メディア企業では、広告に関して「1:10:100」の法則があります。これは紙で100万円だった広告が、オンラインでは10万円になり、モバイルでは1万円になってしまうことを皮肉ったものです。

FTが切り開いた有料課金への道

1525 img05

・購読料アップの牽引役となったのが、2007年9月のメーター制の導入です。メーター制とは、ウェブ上での有料課金システムの一種で、無料と有料をうまく組み合わせた「フリーミアム」モデルの一種です。その特徴は以下のようにまとめられます。
①一ヶ月に一定本数(例えば10本)だけ無料で記事を読める
②一定本数を超えた場合、有料会員にならないと、それ以上の本数を読めない
③有料会員になれば、あとは読み放題。100本でも1000本でも読める検索エンジン、ソーシャルメディア経由で拡散された記事は無料で読み放題
④デジタル版の有料課金の料金は、紙の購読料金より安いことが多い

・顧客のビッグデータを活かすことにより、FTは出版社からネット企業へと変貌しようとしています。その意味で、FTは21世紀型メディア企業のロールモデルの一つと言えます。

ニューヨークタイムズの苦悶と逆襲

・新会長が打ち出す5つの成長戦略

①デジタル:デジタル戦略の核となるのが、有料会員の更なる獲得です。そのために、有料会員の更なるバラエティーを増やします。
②グローバル展開:英語版の翻訳記事だけではなく、現地でジャーナリストを雇い、オリジナルコンテンツを掲載しています。
③動画コンテンツの拡充:動画は読者を引きつける力があるだけではなく、ビジネス的にも魅力があります。バナー広告と比べて、動画広告は単価が高いのです。
④ブランドエクステンション:ブランドエクステンションとは。NYTのブランドをツkっ太商品展開を指します。具体的にはクロスワードパズル、ゲーム、Eコマースなどが候補になります。
⑥イベント:NYTも、そのブランド力と、華やかな人脈と、自社のスター記者・コラムニストを活かした、イベントを拡充していきます。

 

・フォーブスのドヴォーキンは「起業家ジャーナリズム」というキーワードを掲げて、これからのジャーナリスト像を次のように表現しています。「起業家ジャーナリズムにおいては、記者や編集者は、コンテンツクリエイターであり、プロデューサーであり、プログラマーであり、マーケターであり、プロモーターであり、そのずべてができなくてはいけない」

・コンテンツの作り方に唯一の正解はなく、「読者ニーズ最優先型」「未知のテーマ発掘型」「骨太の調査報道型」などが混在する形となるのです。

 

 

ウェブメディアでどう稼ぐか?

・そもそもメディア企業は大きく三つの機能を持っています。それは、①コンテンツを集める、創る機能(調達・生産)、②コンテンツをパッケージ化する機能(編集・統合)、③コンテンツを読者に届ける機能(流通・販売)の3つです。

・ウェブメディアの4類型

①収益力の低いニッチメディア(PV低い+ARPU低い)
②収益力のあるニッチメディア(PV低い+ARPU高い)
③収益力の低いマスメディア(PV高い+ARPU低い)
③収益力のあるマスメディア(PV高い+ARPU高い)

 

8つの稼ぎ方:広告からダイエットまで

①広告:ウェブサイトの主軸となる収益モデル。バナー、テキスト、メルマガ、タイアップ広告に加え、最近はブランドコンテンツと呼ばれる新商品が米国で大ブーム。

②有料課金:コンテンツ閲覧に対する課金が中心。一定数のコンテンツは無料で見せ、上限に達したら課金する「メーター制」が世界中で主流になりつつある。

③イベント:セミナーを開催し、参加料、スポンサー収入を得る。FTは年間200のイベントを開催し、合計1.7万人を動員している。

④ゲーム:英国のタブロイド紙ザ・サンが運営するオンラインビンゴゲームや、ニューヨーク・タイムズのクロスワードパズルなどがある。会員収入で稼ぐモデル。

⑤物販:「ほぼ日刊イトイ新聞」が代表例。『ほぼ日手帳』の2012年版は46万冊の販売を記録。「ほぼ日」を運営する糸井重里事務所の売上高は28億円、純益は3億円に上る。

⑥データ販売:大学ランキングで知られる「USニュース&ワールド・レポート」誌はデータをパッケージ化し、各機関に販売している。

⑦教育:ワシントン・ポストは傘下の大学・大学院予備校カプランで教育事業を展開。ノルウェーの新聞社シプステッドはダイエットをネットで指導する「ウェイトクラブ」を運営。

⑧マーケティング支援:デジタル分野のマーケティングについて企業にコンサルティングするサービス。主な対象は、地域の中小企業。月額定額が主流。

 

ブランドコンテンツという新マーケット

NewImage

・こおブランドコンテンツは、373億ドル(約3兆7300億円:2012年)に上る米国のネット広告市場の中で、まだ15億ドル強(1500億円強)を占めるにすぎません。ただし、成長力はピカイチで、2012年の伸び率は4割弱に達しています。

・こうしたブランドコンテンツの人気の背景にあるのは、従来型広告の陳腐化と、オウンドメディアの広がりです。

 

広告頼みにリスクあり

・「(広告のみに依存することは)倫理的に嫌悪すべきことであり、経済的な自滅行為だ」これは、タイムの共同創業者であるヘンリー・ルースの言葉です。

・第一に、購読料収入などに比べて、広告は景気の波にさゆうされやすいため収入が安定しません。第二に、広告だけでは、いくら頑張っても収益には限界があります。

・広告というアメや法的措置をちらつかせながら、言論を封じ込めようと言うモラルの低い企業もあります。(ちなみに、そういったモラルの低い企業は高い確率で経営が傾きます。)

 

有料化のための3つの条件

・ひとつ目は、媒体が。経済系かエリート(高所得者)系かデータ系のいずれかであることです。

・2つ目の条件は、紙で築き上げたブランドです。

・3つ目の条件は、無料サイトとしての圧倒的な実績です。(中略)特に重要な指標は、頻繁にサイトを訪れる「中毒性の高い」読者の数です。

 

ヒントはネット企業にあり

・有料化の鍵になるのが、コンテンツにプラスαで提供するサービスや機能です。そのヒントがネット企業のビジネスモデルにあります。

・有料課金などの新しいビジネスモデルを創るには、単にいいアイディアがあるだけではダメです。それを素早く実行し、トライ&エラーを繰り返すことが出来る組織形態やカルチャーが欠かせません。新しいメディアビジネスモデルを生み出すことは、今までの組織の延長ではない新しい受け皿が必要になります。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)の著者であるクレイトン・クリステンセンは「ジャーナリズムの破壊的イノベーション」について記したレポートで、3つのオプションを提示しています。

①社内に、デジタル時代に適応した新組織を立ち上げる。
②既存の組織からスピンアウト(分離独立)した新しい組織を立ち上げる
③デジタル時代に適合した組織を買収する

 

 

5年後に食えるメディア人、食えないメディア人

次世代ジャーナリストの条件

①媒体を使い分ける力
②テクノロジーに関する造詣
③ビジネスに関する造詣
④万能性+最低3つの得意分野
⑤地域、国を超える力
⑥孤独に耐える力
⑦教養

 

メディア人の10パターンの生き方

・紙メディア族+ウェブメディア族(=コンテンツ作成のプロ:次世代エディターー、次世代ライター)
紙とウェブの編集部が統合されたときに必要になるのが、紙、ウェブなど媒体に応じて、長さや深さや文体をうまく使い分けられる「次世代ライター」と、緊急性やテーマに応じて、最適なアウトプット法を的確に判断できる「次世代エディター」です。

・ウェブメディア族+ビジネス族(=ネットマネタイズのプロ:オンラインプロデューサー)
今のところ、ウェブメディアの世界は、有料化に成功している一部の媒体を除けば収入の大半が広告です。それだけに、ネットの編集と広告に詳しい、「オンラインプロデューサー」的な人材の有無によって、媒体の収益力が左右されます。

・ウェブメディア族+テクノロジー族(ウェブメディア編集のプロ、データジャーナリスト)
一流のウェブメディア編集長になるには、テクノロジーを肌感覚で理解しておかなければなりません。ハフィントン・ポストのようなテクノロジーの最先端をいくウェブメディアの編集長を、理系畑の松浦茂樹さんが務めているのは、いわば必然といえます。編集ができて、その上、テクノロジーにも造詣が深ければ、いつでも組織を離れてひとりでメディアを運営できます。

・ビジネス族+テクノロジー族(データのプロ:データサイエンティスト、デジタルマーケター)
膨大なデータを分析して、読者・会員獲得や広告ターゲティングに活かせる人材の価値は急騰します。いわゆる、データサイエンティスト、デジタルマーケターと呼ばれる人たちです。今のところ、読者データを使ったビジネスは広告ぐらいですが、ゆくゆくは新しいマネタイズ法が生まれてくるかもしれません。

・紙メディア族+ビジネス族+ウェブメディア族(メディア運営のプロ、起業家ジャーナリスト)
紙もネットも知り尽くし、コンテンツ作成に携わりながら、マネタイズ面でも先頭に立つ—子のカテゴリーにあてはまるのはそんな人です。編集とビジネスの両面で新時代を切り開く「起業家ジャーナリスト」と言えます。「起業家ジャーナリスト」は、あるときは起業家として、あるときは企業の経営幹部として、新しい時代のコンテンツ作成、組織形態、報酬システム、ビジネスモデルなどを創り上げていきます。

・紙メディア族+ビジネス族+ウェブメディア族+テクノロジー族(メディアの専門家:メディアメーカー)
最後は、ロイヤルストレートフラッシュともいえる、スーパーな人材です。紙とウェブの編集、ビジネス、そしてテクノロジーのすべてを知り尽くしたメディアの申し子、いわば「メディアメーカー」です。

 

 

色々とメディア業界の変化やアメリカの現状を紹介してきましたが、血みどろの戦いを繰り広げているアメリカのメディア業界の現状として、昨年遂にネット広告市場の大きさが、一番大きくなり、TVの広告市場を超えました。

スクリーンショット 2014 05 10 12 25 41

IAB – IAB Internet Advertising Revenue Reportより)

 

日本では、TV・新聞とも業界構造が全く違うようなので、すぐにこのような現状になることは考えにくいですが、着々とこのような状態に近づいています。

スクリーンショット 2014 05 10 12 37 44

「2013 年 日本の広告費」は 5 兆 9,762 億円、前年比 101.4% ― 総広告費は 2 年連続で増加、成長軌道へ テレビスポット、屋外、交通、POP、展示イベントが好調 ―より)

NewImage

過去3年で比較すると大きな違いはなく、ネットが少し伸びている程度ですが、もう少し前と比べるとマス広告の市場は減退しています。

そして次の転換点がいつになるかはわかりませんが、これからどんどんアメリカに近い現状になっていくでしょう。

 

また起業家ジャーナリストとして、津田大介さん、渡辺正宏さんが紹介され、メディアメーカーとしてクリス・アンダーソン、田端信太郎さん、堀江貴文さんが紹介されています。

メディア業界で今後一流になれる人はメディアについて精通していることはもちろんとして、経営からプログラミング・は何でもできるような人じゃないと慣れないのですね。

よくスパイク型人材がこれから求められていくと言われていますが、最低3つの強みともありましたし、スパイクがいくつもないと様々な別の分野の人に奪われていくような職種であり、凄い怖いような業界ですね。

 

メディアについて、もっと知りたい方はこちらも参考になります。

メディアの輪郭
新聞紙学的 | Journodelic Medialog

 

また関連記事はこちら。

ソーシャルメディアから新聞まで、メディアの基本を知れる。「メディアメーカーズ」 | Kobayashi Blog
5年後、メディアは稼げるか? | インタビュー | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
R25からLINEまで。日本最強のメディア野郎 | 新世代リーダー50人 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
紙の新聞は終わる?――米国では大リストラ | 紙メディア VS ネット 最終決戦 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
『5年後、メディアは稼げるか』は新メディア人必携の”教科書”か? – たまねぎIT戦士冒険記
【書評】「5年後、メディアは稼げるか」を読んで思った、メディアが広告で稼ぐ難しさと新たな可能性 | CyberTimes [シバタイムス]
全メディア人よ、来たるべき“メディア新世界“に備えよ〜『5年後、メディアは稼げるか』を読んで【ソーシャルテレビラボ】- SMMLab(ソーシャルメディアマーケティングラボ)
1525夜『5年後、メディアは稼げるか』佐々木紀彦|松岡正剛の千夜千冊

 

 

 

 

関連書籍として、メディアメーカーとして紹介されている田端 信太郎さんの著作もオススメです。
ソーシャルメディアから新聞まで、メディアの基本を知れる。「メディアメーカーズ」 | Kobayashi Blog

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

はてなブックマークに追加

 更新をチェックする! follow us in feedly

カスタム検索

Popular Post

Copyright© 新卒フリーランサーのブログ!2014 All Rights Reserved.