クール・ジャパンの迷走はマーケティング視点の欠如 「だから日本はずれている 『クール・ジャパン』を誰も知らない」

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古市憲寿さんだから日本はズレている (新潮新書 566)の書評記事の2つ目です。

この本は『「リーダー」なんていらない』『「クール・ジャパン」を誰も知らない』『「ポエム」じゃ国は変えられない』『「テクノロジー」だけで未来は来ない』』『「ソーシャル」に期待しすぎるな』『「就活カースト」からは逃れられない』『「新社会人」の悪口を言うな』『「ノマド」とはただの脱サラである』『やっぱり「学歴」は大切だ』『「若者」に社会は変えられない』『戦わなくても「革命」は起こせる』『このままでは「2040年の日本」はこうなる』の12章に分かれて、それぞれのテーマについて書かれています。

その2章である「クール・ジャパン」を誰も知らないについて書いていきます!

 

「クール・ジャパン」を誰も知らない

・2020年東京オリンピックの開催が決まった。しかしそこに至までの招致活動には紆余曲折があった。この招致活動を読み解くことで、日本の「クール・ジャパン」が迷走してしまう理由が見えてきた。それはマーケティングと効果測定視点の欠如である。

会議は踊るが意味不明

・2013年、政府は秋元康や角川歴彦、依田巽などを集めて「クールジャパン推進会議」を開催した。この議事録が面白い。(中略)金美齢は会議のたびにスイーツの話を持ち出し、中村伊知哉がせっかくのポップカルチャーの話をした時も、「私はポップカルチャーなるものには全然興味がない」と宣言し、性懲りもなくスイーツの話をしてしまう。

・立場の異なる複数の有識者が参加する会議の報告書が、抽象的になってしまうことは仕方ないとしても、あまりに具体性にとぼしい。というか、何度読んでも一体「クール・ジャパン」が何なのかということさえもわからない。おそらく会議の参加者、官僚、政治家の一人一人がイメージしている「クール・ジャパン」が違うのだ。

・僕がわかったことは、要するに国もクール・ジャパンが何かわかっていないのだということだ。彼ら自身が分かっていないのだから、政策に一貫性がないのも当然だ。

マーケティング視点の欠如

・大手旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の調べ(2013年)によれば、外国人に人気の日本の観光スポットの上位から広島平和記念資料館、伏見稲荷大社、東大寺、厳島神社、金閣寺だという。原爆関連施設は意外な気がするが、他は京都や奈良ちった「定番」。結局、今でも外国から見た日本のイメージはその程度のものなのだ。だったらそのイメージに乗ればいいだけのものを、なぜか政府は不思議な施策を行おうとする。

・要するに、それが「誰に向けた、何のための発信なのか」というマーケティングと効果測定の視点が皆無なのである。「クールジャパン立国宣言」も同様だ。何がクールかはその受容者が決めるのであって、日本が押し付けることではない。

・K-POPに代表される韓国の文化政策はマーケティングのうまさにある。BoAや東方神起などのK-POPブームの牽引役になったアーティストたちには、徹底的な「日本人化」が施された。日本では日本語の曲以外は受け入れられないというガラパゴスさを分析、BoAにいたっては「韓国出身」ということさえも全面に打ち出さずに、ごく普通に日本語の曲を歌わせた。

・オリンピック招致のプレゼンテーションは、今までのクール・ジャパンとはひと味違う。海外から求められている「ニッポン」を、日本人自身がうまく演じきったのだ。滝川クリステルが発した「お・も・て・な・し」という呪文、異国情緒溢れる奇妙なお辞儀。自分たちが発信したい「ニッポン」ではなく、海外映画に出てくるような「ニッポン」に相乗りしたのだ。日本人が「日本人」を演じているのだから、演技に見えるのも当然だ。

だから日本はズレている (新潮新書 566)より)

 

 

クール・ジャパンの迷走、何を目指しているのかがよくわからないということはよく聞くことです。

アニメ・マンガなどのポップカルチャーを売り出していきたいのか、寺社仏閣などの日本の歴史を売り出していきたいのか、日本の食を売り出していきたいのかまったくわかりません。

 

それがマーケティング視点の欠如です。

外国人の日本のイメージは寺社仏閣と言った歴史のイメージが強いようですが、それ以上にこれからの日本は外国にこういうイメージを持って欲しいということがあれば新しいことを打ち出していってもいいのですが、それがないままにクール・ジャパンという戦略が機能するはずがありません。

 

そして、ここで紹介されている限り会議の様子はひど過ぎますね。

普通のビジネスマンなら嫌気がさしてきて、退出してしまいたくなるレベルですね。

実際の会議の議事録を簡単に要約してみます。

 

稲田クールジャパン戦略担当大臣

・私の政治信条は伝統と創造ということで、日本のよき伝統を守りながらも新しいものをどんどん創造していく、これが日本のクールではないかななどと思っております。

依田議員

・コンテンツ産業という言い方をされるようになって10年たった今日、今回の補正予算で170億円の予算措置をいただきました。この補助金を活用しローカライゼーション、プロモーションを進め日本のコンテンツの海外進出を促進し、現地でのビジネス化を実現させたいと思います。そして、コンテンツを先兵として「オールジャパンブランド」の海外競争力を高めるため産投資金投入を含め国の支援としてのクールジャパン戦略を推し進めていただきたいと思います

秋元議員

・クールジャパンというものは、やはり漠としていてわかりにくいなというのはいまだに思っています。クールジャパンというと、どうしてもコンテンツ、コンテンツという言葉が出て、国民の皆さんがどこまでクールジャパンを理解できるかというと、ほとんどがわからない。クールジャパンという言葉自体がわからないし、コンテンツもわからない。

・どうしても今、コンテンツ、コンテンツが先行してしまって、日本がエンターテインメントを輸出するためのプロジェクトのように思われてしまう。そうではなくて、文化を知ってもらうことで日本製品に興味を持っていただくことが必要。利益を生むか、生まないかは、私はビジネスマンではないのでわからないですけれども、それよりもそこの後ろに控えているのは日本の今までの文化全てをそこで紹介したいということだと思うので、それを共通の認識として持たないと、何かコンテンツ、それは漫画なのでしょうとか、それは何とかなのでしょうで終わってしまうのではないかなという危惧はあります。

金議員

・今の秋元さんの話はそのとおりだなと思うのですけれども、総論を言っていれば切りがないので、1時間のうちにこれだけの人間が何をしゃべるのかわかりませんけれども、総論は言いません。ですから、私は各論から入ります。

・私はここで、もちろん和食というのも日本の持っている強力なカードの一つですけれども、実は今、日本のパンとスイーツというのは世界一なのです。だから、それをカードにして行くべきではないかと思います。

・もう一つはインバウンドの問題なのだけれども、たまたま台湾で、今、新幹線ができたものですから、国内線の飛行機が何年も非常に寂れているのです。だから、国内線の飛行機会社が何とか日本に飛べないかということなのです。

佐竹議員

・私は、外食産業代表ですので、一般に総論から入るのですけれども、経済は文化のしもべであるといいますが、本当に人間としての生きがいを一番感じるのはやはり文化、芸術なのです。その一番の礎となっているのが、食文化だと思うわけです。

・我々としては、やはり海外でやる日本食レストランの普及はもちろんの事、日本の食材の輸出も一方で図りたいということで、イメージとしましては、日本でイタリアンレストランが繁栄しているが如く日本食のイタリアンレストラン化をめざしています。
すなわち日本人でさえイタリアンレストランと言えば、ピザ、パスタ、ハム、ワインと言うように具体的な商品、食材が思い出されるように日本食の食材も海外の人に思い出させることを目標に普及活動をしています。

コシノ議員

・先ほど秋元さんがおっしゃった、大体クールジャパン自体が内外ともに本当にわかっているのかという、その一言で伝わるということがなかなか難しいと思うのです。
日本語で言うと格好いいとか、かわいいとか、これをもっと日本語で世界に伝える方法はないかなと思います。決して横文字を使うことではないと思います。日本の文化を輸出するわけですから、日本語も同時に輸出していいのではないかと思うのです。

クールジャパン推進会議(第1回)議事録より)

 

途中からもう議事がひどくて、見たくなくなるような会議ですね。

まあ最初だからということもかもしれないので、これらの会議を経て決まったアクションプランを見てみます。

 

「トータルコーディネート」「一緒に」

①クールジャパンの発信の先駆として、世界で高く評価されている日本の食文化の発信イベントを海外で順次行う。

②アニメーション等のメディア芸術をはじめとする芸術文化の総合的な振興を図るとともに、伝統文化やポップカルチャーとの融合を含めた日本発の芸術作品を海外に発信する。

③日本関連コンテンツのローカライズ、プロモーション、国際共同製作支援によるクールジャパンの発信及び株式会社海外需要開拓支援機構(仮称:クール・ジャパン推進機構)による出資等を活用した日本企業の海外展開支援等を効果的に行い、インバウンドの推進につなげるサイクルを実現する。

④地域の放送局や番組製作会社等が能力と意欲のある中小企業、自治体等と協力して食や観光資源等の情報を放送やネットを通じて海外に発信し、地域活性化を進める取組やポップカルチャーの映像コンテンツの発信を支援する。

⑤外国の要人・著名人への働きかけや、内外でのイベント、在外公館の活動等を通じて、日本国内に滞在する外国人に対してはもとより、広く外国においても日本産酒類の魅力を日本産農林水産物・食品と併せて発信するとともに、輸出環境の整備を図る。

「きっかけ」

⑥「かわいい」、「おいしい」、「カンパイ」などの外国人にとって魅力的な日本語の発掘を進めると共に、クールジャパン発信イベントにおいて、そのような日本語のローマ字表記と適切な外国語を組み合わせて、国際通用語となるコピーやロゴ(例”Kampai” to the world)を作成するなど、クールジャパンを知るきっかけを世界に発信する。

⑦総理大臣、ファーストレディ、クールジャパン戦略担当大臣などが公式行事などの場で率先して日本ブランドを発信する。

クールジャパン発信力強化のためのアクションプランより)

 

こんな感じのものが19個のアクションプランにまとめられています。

ポップカルチャー、歴史、食など全てが入っている感じです。

 

全くマーケティング視点はありませんね。マーケティングの基本はターゲットを絞り、そのターゲットに合わせた施策を行うことです。

こんなに広い概念で、幅広く日本のものを扱っていたら、誰のために、何をするのかよくわからないのが当然です。

 

日本のいいところ全てをクールジャパンに押し込むのではなく、何を今クールジャパンとして、何を日本として、世界のどこに押し出していくのかということを明確にしなければ、こういう戦略は無意味だと思います。

たぶん日本のいいところはたくさんあるし、押し出したいところもたくさんあるので、決めきることができないんでしょうね。大きな事業なので、色々な利権もありそうですし。

 

 

クールジャパン推進会議をもっと知りたい方は、こちらから議事録・資料等を見ることができます。
クールジャパン推進会議

 

 

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